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ノーレイティングとは?|相対評価をしない新しい評価手法

ノーレイティング

レイティング(rating)とは評価という言葉です。
ノーレイティングとは、評価を行わないことではなく、従来の人事評価制度とは異なり、年次評価で社員のランク付け行わないという、比較的新しい人事評価手法です。
リアルタイムの目標設定とフィードバックを実施する中で、その都度評価を行います。

ギャップ、マイクロソフト、GE、アドビシステムズ、アクセンチュア、IBMといったグローバルカンパニーが「ノーレイティング」を導入しています。

これまで、企業の評価制度の多くは、毎年年度末に1年間の働きを評価し、A、B、Cなどのランク付けを行い、それに伴って給与や賞与、役職などが決まる形式になっていました。
社員の目標達成率や成績をもとに、相対評価をしてランク付けをする制度の為、成績や評価項目と照らし合わせ「平均以上かどうか」という尺度で判断すればいいので、評価する側が一定の評価を割り振りやすくなっていました。

これに対し、ノーレイティングでは、年度単位での評価はせず、ランクも付けません。リアルタイムで目標設定を行い、その目標に対して上司と対話します。上司からフィードバックをもらうことにより、その都度評価が下される仕組みです。
双方が合意した目標に対し頻度高くフィードバックし評価をするため、他の人と比較した結果あなたはこの評価、といった従来の評価の形とは大きく異なります。

目次

ノーレイティングが生まれた背景|レイティングによる悪影響

大多数の従業員のモチベーションが上がりにくい

従来のレイティングでは、「どのランクに何人の従業員」「それぞれのランクに何人の従業員」といった前提で評価をします。仮に5段階のレイティングを行った場合、そうした大多数の従業員の評価は「B評価」や「C評価」といった中間的なものに集中します。中間的な評価では、企業から自分への期待などを実感するのが難しいため、なかなかモチベーションは上がりません。

従業員のチャレンジ、成長が阻害される可能性がある

他社と相対評価されるため、上司や周囲からの評価を必要以上に気にしたり、失敗してランクが下がることを恐れて、挑戦心を削ぐ可能性があります。評価を考えると、難しいことにトライするより無難に過ごした方がいい、と思う従業員が増える傾向があります。

評価のタイミングが遅くなる

レイティングは通常、期末や年度末といったタイミングで、過去の出来事を振り返りながら行われます。そのため、評価結果は「今の自分」への評価ではなくだ、いぶ「過去の自分」への評価となります。年1回の評価などで、だいぶ昔が評価されることで、「現在の自分」を見てもらえず、現実との間に乖離が生じ納得感を醸成できない可能性が高まります。

ノーレイティングのメリット・デメリット

メリット

目標設定や評価への納得感が高まる

従来のレイティングでは、半期・年度単位で個人目標を設定し、期末・年度末に評価を受けていたため、評価のタイミングで「過去に立てた目標が現在の状況に即していない」「なんで今になって過去のことに対して指摘するの?」といったズレが生じ、不満を生んでいました。
ノーレイティングでは、上司と部下の1on1での対話の中でリアルタイムに目標設定・修正をし、評価を受けることができます。それにより「今の自分の状況に合った目標を上司と相談しながら設定できる」「今の行動や頑張りが評価され、タイムリーに指摘をもらえて軌道修正ができる」と従業員が感じ、目標設定や評価への納得感が高まります。

従業員のモチベーションが向上する

従業員が成長していくためには、モチベーションを保ちながら仕事に臨むことが重要です。ノーレイティングの場合、リアルタイムに目標設定と評価を行うことで従業員の納得感が高まり、「もっと能力を高めたい」「もっと貢献したい」という気持ちが生まれ、モチベーションの向上が期待できます。従業員のモチベーションが向上することにより、生産性の向上も期待できます。

働き方の多様化に対応しやすい

近年、裁量労働制や短時間勤務、在宅勤務など、従業員の働き方が多様化する中で、一人一人に合った評価がしやすいという点が挙げられます。ノーレイティングでは上司と部下との定期的に行われる1on1の中で、個人の状況に合わせた目標設定と、それに対する評価ができるため、在宅ワークや時短勤務といった多様な社員を、他人とではなく、設定した目標に対してどうだったか評価することができます。従来のレイティングの場合は、相対比較するために、働き方が異なる社員を同一の尺度で評価しなければならず、多様な働き方の社員を認め公平に評価するには、評価基準を適正に設定することが困難でした。

デメリット

管理職の負担増加

裁量と共に、ノーレイティングを運用するにあたっては、管理職の負担が増大します。
評価をする立場にある上司は部下との密接なコミュニケーションを何度も繰り返しながら、状況に応じた目標設定やフィードバック、アドバイスを行う必要があるためです。また、時間や手間はもちろんのこと、柔軟に対応できる目標設定と評価の高いスキルが求められるため、スキル習得のためにも一定の時間を要します。

管理職に高いマネジメント能力が求められる

従来のレイティングであれば、統一された評価項目・基準に応じて相対的なランク付けを行うため、上司が部下を評価することは比較的容易でした。
しかしノーレイティングでは評価のための判断がすべて上司に委ねられており、上司のマネジメント力が低い状態では、上手く運用が回りません。

賞与のコントロールが難しい

従来の相対評価によるレイティングの場合、合計額を相対評価に対し割当て行くだけなので、賞与全体のコントロールは比較的簡単でした。
一方で、ノーレイティングの場合、各組織の管理職によって相対比較でなく個別に評価がなされるため、賞与全体額や配分のコントロールが難しくなります。
実際の報酬決定は、管理職に人件費予算を与え、給与決定を一任する。実際の報酬決定の際は、他のマネジャーも含めた調整プロセスであるキャリブレーションを実施する。とパターンはいくつかありますが、基本的に上司が部下の給与を決定することになるため、管理職の裁量は従来より大きくなります。

ノーレイティングの運用実態|テレワークが導入の追い風に

ノーレイティング導入のパターン

導入する企業の運用方法は「人事部門がサポートに回る」、または「完全に現場のマネージャーに任せてしまう」の2つに大別されます。 前者は、現場のマネジャーに任せっきりではなく、ノーレイティングは現場マネージャーの負担を増大させるため、軽減する仕組みを、会社がきちんと構築してサポートを行っています。
後者は日本的な人事制度や文化との親和性がたかくないため、日本企業での運用実態は人事部がサポートに回る形が大半です。
ノーレイティング最大の課題は、マネージャーの負荷の増加です。きちんと運用していくためには、導入に際し、マネジメントの業務設計の見直しや、ITツール(HRテックサービス等)を活用して、業務やマネジメントを効率化するなど、マネージャーの負担を軽減する仕組みづくりが人事には求められます。

テレワークにも対応できる評価制度で注目が集まる

新型コロナウイルスの影響で、テレワークやサテライトオフィスの活用、あるいは短時間勤務など様々な取り組みが加速しています。相手の働きぶりが見えにくくなる状況では「1on1ミーティング」など、上司と部下のコミュニケーションをきちんと機能させなければ、コミュニケーションが不足し組織が機能不全を起こしてしまいます。
ノーレイティングでは、従業員ごとの目標管理に合わせて、業務のPDCAサイクル、評価、フィードバックのサイクルを短いスパンで回すことをルールとするため、テレワークのような意思疎通が不足しがちな環境下でも、上司部下のコミュニケーションをきちんと機能させることに寄与します。
テレワーク下でも、従来のレイティングという評価制度より、目標設定や評価への納得度、社員のモチベーションを維持しやすい評価制度です。

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