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正義を振りかざす部下に、マネジメントはどう対処すれば良いか?|問題社員への対応

管理職の悩みの一つに「特定の社員への対応に苦慮している」というものがあります。
今回は、実際にあった問題メンバーに関する相談をもとに、マネジャーはこうした問題をどう処理すべきなのか?判断の基準や考え方について解説します。

目次

Ⓠ マネジャーからのお悩み相談|自らの正義を主張する部下

チーム内のあるメンバーから「平等」に対してのエスカレーションが多く、対応に苦慮しています。
先日も、在宅勤務ができるメンバーと、業務上できないメンバー(全体の1割程度)に差があることは不平等だから、在宅勤務は全て禁止すべきだと言われ対応に困ってしまいました。
在宅勤務は原則前日連絡が必要ですが、体調不良や子供の世話等のやむを得ない理由から、当日朝に出社から在宅勤務に切り替える例が見られます。
しかし、在宅勤務できないメンバーはそのようなフレキシブルな対応はできません(休むしかない)。その不平等を解消するため、在宅勤務は例外なく全面禁止にするべきだとの主張です。当該メンバーは強い口調で「不平等だ!」と主張してきており、度々このように、自分の正義を信じてクレームをつけてきます。
私としては、不平等は解消されるべきですが、かといって平等を最優先して、在宅勤務の利便性を全て切り捨てる、というのはいささかやり過ぎでは無いかと思っています。
このような例で、少数派に対してどの程度配慮をすべきなのかについて、マネジメントの一般的な考え方をアドバイスいただきたいです。

Ⓐ マネジメントはチームに求められるゴール(業績、役割、目標等)に向かって行うものである

「正義」や「平等」を振りかざすメンバーがいた際、会社組織においては日常的な争いと比べ、実は判断はそれほど難しくありません。
今回の争点となっている「平等」を例に、マネジメントの観点で、こうした問題への対処を考えてみましょう。

マネジメントはチームに求められるゴール(業績、役割、目標等)に向かって行うものです。
マネジャーは学級委員では無いので、全員のご機嫌取りをする必要はありません。
あくまでチームが向かうゴールに向けて必要な支援や助言を行い、メンバーを導いていくことが求められます。
メンバー全員が納得することでも、チームのゴールに向かわないなら、遠ざかるなら、その判断は間違いです。

「ゴールに向かうための要望なのか?」、「要望に応えればより早くゴールにたどり着くことができるのか?」が重要であり、それとメンバーの希望や意見が一致するのであれば、要望を受け入れる価値があります。
しかし、メンバー個人の要望が満たせたとしても、何もゴールに近づかないならそれは会社やマネジャーが対応する種類の問題ではありません。

例えば会社が社員やその家族の健康に役立つ福利厚生を導入したりして健康に投資するのは、ただ良かれと思ってやっているわけではありません。
社員やその家族が病気になり働けなくなることを防ぐ、より社員の会社への帰属意識が高まりパフォーマンスの向上・離職率の低下が見込める、などの理由から、社員の健康を大切にすることは会社にとって合理的だからです(ゴールに近づく、ゴールを達成する可能性が高まる)。

マネジメントは全体のパイの最大化を目指すもの

マネジメントは一人ひとりの要望や文句に応えることではなく、チームとしての最大公約数を目指すものです。
もちろん一人ひとりの要望を全て実現できれば最大となりますが、現実ではそうはいきません。応えるべきでない要望もあるでしょう。全員の意見が一致する事柄ばかりでもありません。
チーム全てから信頼されるマネジャーもいますが、いくら優秀なマネジャーでも、メンバーに問題がありそうはならないケースもあります。
叶えるべきこと、却下すること、支援すること、支援しないこと、そうしたことをビジョンやバリュー、チーム方針や制度、合理性、倫理観等を基に判断することで、チームの成果やエンゲージメントの最大化を目指します。

例えば今回の在宅勤務のケースでいえば、もし要望に応えれば全体の幸福(働きやすさ)の総量が減り、不平等を囃し立てた人間の感情だけが救われます。
在宅勤務が会社として認められ活用されているのであれば、本件に取り合うことで全体の幸福(働きやすさ)は縮小することから、受け入れられない要望になります。
マネジメントは全体のパイの最大化を志向するのであって、個々の願望や文句に全て応えていくことではありません。

会社は社員を平等に扱わないし、そもそも不平等な場所である

成長の機会、昇進のスピード、上司の当たり外れ、転勤、異動、給与、評価等、会社は不平等で溢れています。
会社は社員を平等には扱っていません。労務や人事規則のような法律上求められるルールや人事制度のような基準が平等にあるだけです。
会社はそもそも不平等な場所であることを理解しましょう。
平等が問題になるのは、不平等であることで組織の最大成果が脅かされている場合だけです。

言い換えると、不平等を改善することで社員全体の幸福・業績の最大化にポジティブに働く場合のみ、不平等は解消する価値があります。

例えば、会社が評価している人材は希望する異動がすんなり認められるが、そうでない人はいつまで経っても異動が認められなかったとします。まったく平等ではありませんが、会社として高い成果を上げる人を優遇するのは合理的な判断です。
いなくなると困る優秀な社員からの要望であれば聞く気になりますが、そうでないメンバーの要望には真剣に取り合わないこともあるはずです。
こうしたことは企業や組織の存続にとって極めて合理的な判断であることから、無くなることはありません。

平等を振りかざすメンバーには、会社は学校ではないので、そもそも平等であることが最重要視する価値観ではない。平等を第一に動くことはないとはっきり伝えましょう。
今回のケースでいえば、あなたの要望の実現で生じるチームにとっての働きやすさのマイナスを、補って余りあるプラスの影響はいったい何があるのか?と問うべきです。

たとえば、コロナ後に行っていた在宅勤務を解消し、原則出社に切り替える会社が出てきていますが、あれも平等が判断理由ではありません。
コミュニケーション不足による全体業績・パフォーマンスの低下懸念。 新人や中途入社者の育成がうまく進まないことによる中長期での企業の持続性・業績への懸念などのデメリットが、在宅勤務を認めることによる働きやすさというメリットを上回るという会社判断からです。
平等は考慮すべきですが、マネジメントや会社の立場での判断理由で、平等が最も大きな理由となることはまずありません。

マネジメントは、上を引き下げて帳尻を合わせてはいけない

マネジメントは、「上を引き下げて」調整するのではなく、「下を引き上げて」上に合わせる方向で考えましょう。
誰かを引き下げて自分と同じにすることで満足を得ようとするタイプの人は一定数います。
しかし、これをしたところで、文句をいった人の現状は何も変わりません。ただ、文句をいった人の被害者感情が満たされるだけです。
誰かが得をしていることを引き下げても、文句を言った人が引き上がるわけではないのです。

今回の例でいえば、リモートワークを一律禁止したところで、あなたの環境は何も変わらない。あなたの怒りや不満の感情を解消するためだけに他のメンバーの利便性を損ない、チーム全体の働きやすさを下げることは、全く建設的ではないので受け入れられないとはっきり伝えるべきです。
話し合うのであれば、誰かを引き下げる以外の方法で、マイナス感情を持ったメンバーの不満を解消する方法を探ることになります。

判断と判断理由をセットで伝える

意思決定がリーダーの仕事です。
判断を求められた際に、判断を保留にしたり、判断をせず放置することは避けなければなりません。

不合理な要求への対処に苦慮している姿、優柔不断な姿は、メンバーのエスカレーションや過度な要求を助長してしまいます。
リーダーは、スピーディーに判断するために、自分の中で判断軸を持つ必要があります。
判断できない優柔不断なリーダーに人はついていきませんし、メンバーはナメてかかり文句ばかり言うようになります。
毎回決断し、判断の理由をしっかり伝えていきましょう。そうすれば、リーダーの判断軸をメンバーも理解するようになり、判断軸と合わないエスカレーション自体が減っていくはずです。

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