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年上部下との接し方のポイント|年上部下のマネジメント方法

年功序列が崩れてきた影響で、年上の部下を持つ管理職が当たり前になりつつあります。
それに伴い「年上部下のマネジメントに困っている」「年上部下が言うことを聞いてくれない」という悩みが増えてきました。

今回は、年上部下との接し方、マネジメントのポイントについて解説します。

目次

年上部下のマネジメントが難しい理由

年上部下のマネジメントが難しい理由には、3つの構造的な問題があります。

1つ目は、会社の制度によるものです。

年上部下は、会社の中での自分の未来が見えてしまいます。
自分より年下の上司についた時点で、もはや昇進は望みにくいです。

また、役職定年であれば、今後給料や地位も上がる可能性はゼロです。
仕事でのアップサイドが見えないため仕事にやる気を持てず、どうせ同じ給料なら楽をしたい心理が働きます。

彼らは定年退職を夢見て、ひたすら残りの会社人生をやり過ごそうとします。
これが、年上の部下が問題児になってしまう背景です。

2つ目は、日本特有の解雇規制によるものです。
日本では、企業による社員の解雇が非常に厳しく制限されており、余程のことがない限り社員を解雇することが出来ません。年上部下は会社に貢献しなくても居続けることができてしまいます。

つまり、会社に貢献し続けなければ解雇されるかもしれない、そういった危機感を持ち合わせていません。

年下上司の言うことを聞かない、自分本位で会社に貢献しようとしない、そんな年上部下が大量に生まれてしまうのは、こうした解雇規制がベースとなっています。

3つ目は、文化的な背景によるものです。
日本では、目上の人を敬う儒教文化が根付いています。
先輩後輩の上下関係、上座下座がある、こうした文化は、人間関係には上下があるという儒教による影響を反映しています。

反対に、キリスト教では神の下では皆平等です。
上司との上下関係や、老人を敬うといったことはありますが、先輩後輩や、ちょっと歳が離れているといったことで敬う文化はありません。

年上部下は、「年下の言うことは聞けない、聞きたくない」「オレの方が先輩だから」そういった潜在意識を持ってしまっています。

このような年齢による上下の意識は、今の若い人より昔の人の方がはるかに強いです。
能力と関係がないところでの上下関係を持つ文化的背景が、年上部下のマネジメントを難しくしています。

年上部下との接し方の基本

年上部下のマネジメントの基本スタンスは「立場は上だが、人生経験は下である」というスタンスです。
上司としての立場をしっかりと示しつつ、先輩を敬う姿勢を見せる、このバランスが大切です。

年上部下に舐められてはいけないと上から感を出してしまうのはいけません。
目上の人に対する敬意を欠いてもいけません。

だからといって、遠慮しすぎて上司としてきちんとモノが言えないのも問題です。
難しい立ち位置ですが、上司の立場と、目上を敬う気持ちの両方を意識した言動を心がけ、年上部下と接していきましょう。

年上部下への指示の出し方

年上部下は経験と自信があるので、自由を行使しがちです。
明確に指示を出さないと、マネジャーの認識とズレたアウトプットになることがよくあります。
ゴールは明確に示しましょう。

実力のある年上部下であれば手段はある程度任せてしまっても構いません。
しかし、年齢を重ねていても実力の無い方もいます。
その場合は、手段をまるっと任せてしまうのは危険です。
相手のレベルに応じて、任せ方を決めて業務指示を出しましょう。

また、年上部下が上司を舐めている場合、指示であることを明確に伝えないと、依頼した仕事が対応されないことがあります。
お願いや相談だと思われると無視されることがあるため、「何を(What)」「どのように(How)」「いつまでに(When)」を明確にし、業務依頼だとハッキリ分かる形で指示しましょう。

特に、流されやすいのが納期です。
明確にし合意しておかないと、年下上司の依頼を後回しにする人もいます。

年上部下に宣言させても良いですし、上司としての希望を伝え合意を取っても構いません。
納期が決まったら、無視されないように、納期を相手の予定表にすぐ投げてしまいましょう。

年上部下のマネジメントの注意点

年上部下に対しては、コーチングアプローチで相手への問いかけを使い、やり方や期限を設定するのが効果的です。
年上部下は経験があるからこそ、何かしら言いたいことがあることが多いためです。

何が問題だと思いますか?(原因)
どうしたらよいと思いますか?(解決策)
どうやって進めていくべきでしょうか?(具体化)

問いを使って導けば、上から感を出さずに(指示や命令感を出さずに)導くことができます。

ただし、コーチングを活用するには注意が必要です。
それは、上司の「判断力や能力」について、年上部下からある程度認められていないと使えないということです。


「上司・部下の関係においては」、上司の判断力や能力について部下が全く認めていない場合、コーチングが機能しません。

年下部下の場合は、経験の長さや年齢が上であることから、一定の敬意を持って見られており、最初からコーチングが機能することも多いです。
しかし、年上部下の場合は違います。
年上部下は、年下上司に対してそうした感覚を持っていません。

したがって、年下上司が能力を示さなければ、年上部下はコーチングアプローチを素直に受け取ってはくれません。

年上部下からまったく認められていない状態で、年下上司が報告や相談に対し「どうすべきと思いますか?」のように問いかけると、「能力がない」「指示・判断ができない」「上司の責任を放棄している」といった、無能のレッテルを貼られてしまいます。

「こいつは上司としての判断能力やスキルをまあまあ持ってるな」くらいは年上部下を認めさせていないと、コーチングアプローチはただマイナスに働くだけになってしまうため注意しましょう。

対応策としては、年上部下との関係性の序盤では、まず自分の考えや判断を示すようにすることが有効です。
「私はこう考えていますが、◯◯さんは思いますか?」のように自身の考えや判断を示した上で、相手に意見を求めます。
自分の判断能力や業務スキルを、相手に示すよう心がけてください。

年上部下のマネジメントでは、年下上司は仕事の能力に対する信任を得た上で、コーチングを使って関係性をつくっていくことが有効です。

年上部下からの報告、相談の受け方

年下上司に報告や相談をするのは、年上部下からすると心理的に嫌な行為です。
報告とは上に対してするものという潜在意識があるため、年上部下を放っておくと報告や相談は敬遠されます。

「いつ」報告、相談がほしいか予め明示しておきましょう。
そして、すぐに相手の予定表に報告タイミングを投げて、言い逃れができないようにしましょう。

年上部下を褒める際には注意が必要

年上部下は、年下上司に褒められることに複雑な感情があり、素直に喜べません。
例えば「○○さんは仕事が正確ですね」「○○さんは仕事が早いですね」といった形で褒めると、相手は評価されている感を感じてしまいます。

年上部下を褒める際のコツは、「承認称賛したい場面で、感謝を活用する」ことです。

「仕事が早くて助かりました、ありがとうございます」
「仕事が正確で効率的に進めることが出来ました、ありがとうございます」

こうした、アウトプットに対する事実(良かった結果)と、感謝を組み合わせると、上司から評価されている感が出ず、年上部下は、年下上司の言葉を素直に受け取ることができるので効果的です。

年上部下のメンツを潰さないように配慮する

他のメンバーの前で年上部下を叱ると、年上部下のメンツをひどく傷つけます。
年上部下は反撃し、反抗心を持つだけになってしまいます。

年上部下を叱ったり、指導する際は、なるべく場所を移し行うようにしてください。

ただし、年上部下がチーム全体に悪影響を与えており、個別注意をしているが中々改善されない場合や、指導しないことが他のメンバーに放置として捉えられてしまうような事象の場合は、人前で注意して構いません。

年上部下の目標設定と評価のコツ

年上部下は、これ以上のアップサイドが見えないことで、新たな仕事は避けたいという心理になりがちです。
そのため、本人に目標設定を任せると、低い目標を設定しようとする傾向があります。

年上部下の目標設定では、チームと個人の接続を示し、ロジックの通った要求を行いましょう。
具体的には、マネジャーがチームの目標を明示し、それを達成するためにあなたには何をしてもらわないといけないのか、伝えることが重要です。

また、目標は抽象的な言葉でなく、具体的な数字で計測できる形に落とし込みましょう。

年上部下の場合、本人にモチベーションがなかったり、自分の方が年配であるという意識から、目標を年下上司の主観やお願いのように捉えられてしまうと、目標にコミットしてくれません。

会社の指示として、合理的で納得せざるを得ないような形で、目標を設定することがポイントです。

評価に関しては、年下上司個人の考えや感覚で評価していると思われると、年上部下は納得せず反発します。

会社で決められた制度や基準に沿って、客観的に判断していると相手に感じさせるよう意識してください。

チームへ悪影響を与える年上部下への対処法

「年上部下が、自分(年下上司)のいないところで悪口を言っている」
そうした自分(年下上司)に対することの場合は、放っておきましょう。

年上部下と、面と向かって話をしてもしこりが残るだけです。
「自分は言っていない、誰から聞いたのか?」という話になっても面倒です。

上司としては、やるべきことをやるだけです。
知らないふりで何の問題もありません。

一方で、チーム方針や全体に関わることで、年上部下がチームに悪影響を与えているようならすぐに対処します。

この場合、オープンな場で年上部下に不満を言わせるようにすることが有効です。
例えば、チームミーテイングで、本人に質問して話を振る。
議題として挙げ、メンバーの前で話し合いを行う。
その場で、出てきた不満や反対意見に対して、上司としてきちんと回答、説明を行いましょう。

オープンな場で、年上部下が何ら意見を言わないこともあるかと思います。
ただ、その場合は、放っておいて問題ありません。

他のメンバーは、陰で色々言ってたのに上司の前では言わないのかと呆れるだけです。
そんな人にチームに対する影響力は生まれません。
影響力のない人の話は、上司は気にする必要はありません。

一方、年上部下が、上司の指示を聞かなかったり、ルールに従わなかった場合は注意し続けましょう。
放置してしまうと、他のメンバーに悪影響が出る可能性があります。

たいてい注意されなくなると、年上部下の行動はエスカレートします。
もし、他のメンバーに悪影響が出てしまい同調する人が出たら、その人に対しても同様に注意しましょう。
「◯◯さんもやっている」と言われたら、「◯◯さんにも注意している。君はあの人のようになりたいの?」と問いかけましょう。
間違いなく「なりたくない」とメンバーは思うはずです。

活躍する年上部下の特徴

会社単位でシニア社員が活躍している事例は難しいものの、組織単位でみるとシニア社員が活躍しているケースはいくつもあります。

立教大学 経営学部 田中聡助教授の調査では、活躍するシニア社員の行動特性として、下記のような傾向が見られたそうです。

1. 仕事を意味づける
自分にとってのやりがいや社会的意義という観点から仕事の意味を捉え直すこと

2. まずやってみる
失敗を恐れずに、新しい仕事や役割に積極的にチャレンジしようとすること

3. 学びを活かす
仕事経験を振り返り、そこで得た教訓を自論化して次の場面でも適応しようとすること。行動しっぱなしにせず、経験からの学びを振り返る

4. 自ら人と関わる
関わる人の範囲を限定せず、積極的に多様な人と関わり、異なる主張や意見を引き出す役割を果たすこと

5. 年下とうまくやる
年下の仕事相手とも年齢差を気にすることなく、対等なパートナーとして仕事を進めようとすること

こうした行動特性を本人が根本に持っており、かつそうした行動特性が表れる環境をマネジャーが用意してあげることができれば、意図的にモチベーション向上に繋げられる可能性があります。

年上部下のモチベーションを上げる方法

役割を与え、居場所をつくる

役割を与え、居場所を作ることで活躍している事例があります。
部門間の調整役、人脈を活用する役割は適任のようです。

年上部下は、マネジャー以上に社内、社外にさまざまな人脈を持っていることがあります。
そうした、これまでの実績や経験を生かした役割で活躍する例が見られます。

得意なことを任せる

年上部下は、成長へのモチベーションがないことが多く、新しいことに取り組むのを避ける傾向があります。
そのような場合、割り切って得意なことを任せるというのが、お互いにとって良いケースもあるようです。

育成の役割を任せる

自身の知見を若手に継承したいなど、育成に前向きな方では、若手の育成で活躍している例が見られます。

ただし、若手はデキル人に指導を受けたいと考えているため、年上部下に役割を与えることを優先し、教えるスキルやマインドのない人を後進指導にあてると、若手にとってマイナスに働いてしまいます。
後進育成の役割は慎重に判断しましょう。


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