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マネジメントには、なぜ「キャリアの理解」が必要なのか?

目次

「キャリアの理解」とは

キャリアの理解とは、メンバーがやりたいことや希望するキャリアを把握し、その実現に向けてサポートすることです。
こうした内発的な動機づけは、長く維持されやすく、やりがいやモチベーション向上に繋がりやすいとされます。

メンバーが希望するキャリアを理解しようとせず、一方的に仕事を任せるやり方では、仕事への動機づけができず、チームの生産性や、メンバーのやりがいを高めていくことは不可能です。
メンバーがやりたいこと、希望するキャリアを把握した上で、いかに今の仕事に接続し、動機づけするか。これはマネジメントを行う上で必要不可欠なスキルの一つです。

「キャリアの理解」の低下が招く、マネジメントへの悪影響

キャリアを理解しようとしない場合は、「人としての信頼」を悪化させます。
メンバーのやりたいことやキャリアを考慮せず、チームやマネジャー都合のみで仕事を任せている状態です。
メンバーは自身が尊重されていると思えず、組織の駒のように扱われているという印象を与えてしまいます。
結果、チームに貢献したいという意識やマネジャーに協力したいという気持ちが芽生えず、マネジメントが機能しなくなります。

キャリアの理解が浅い場合は、「目標設定」「アサインメント」「承認・称賛」などの質が高まらず、「仕事のやりがい」「能力・スキルの向上」を高めていく支援が難しくなります。

キャリアの考えを理解しサポートする姿勢がないと、マネジメントのさまざまな場面でマイナスの影響が出てきます。

キャリアの理解が低いことが招く悪影響
  • 任せる仕事に対して動機づけできず、生産性(仕事の質)が低下する
  • メンバーの内発的動機づけが難しく、やりがいや成長を感じづらくなる
  • メンバーを理解しようとしない利己的なマネジャーと思われてしまう
  • 無意識に自分と同じ価値観をメンバーに求めてしまう
  • 目標設定が「会社から与えられたもの」になり、納得度が高まらない
  • 仕事への主体性や、マネジャーへの協力姿勢がなくなる
  • 会社やチーム、仕事に対する不平不満や愚痴が増える
  • マネジャーに対して批判的・反発的な態度が増える
  • 異動希望や退職者が発生しやすくなる   など

「キャリアの理解」を低下させる要因として考えられること

キャリアを理解しようとしたことがない場合は低くて当然ですが、メンバーへの聞き方が悪くうまく把握できないと悩まれるマネジャーも少なくありません。
また、キャリアについて対話し把握しているつもりでも、メンバーが理解してもらえていると感じていない場合もあります。
これは、対話の頻度が少なくメンバーのキャリア観が変化している、希望を伝えたが応援してもらえない、希望を聞かれただけで特にマネジャーの変化を感じない、といったケースが多いです。

自覚がある場合、ない場合、状況はそれぞれですが、メンバーへのサーベイで「キャリアの理解」が低いスコアとなった場合は、以下のチェックポイントが満たせているか、自身の行動を振り返ってみてください。

キャリアの理解に関するチェックポイント
  • メンバーとの会話が、目の前の仕事の話ばかりになっていないか
  • メンバーのキャリアや価値観を把握するための対話をおこなっているか
  • メンバーの希望を考慮せず、できる人に仕事を振ってしまっていないか
  • 仕事を任せるタイミングで、業務に動機づけする意識を持っているか
  • フィードバックや内省支援により、メンバーの成長支援をしているか
  • 部やチームの未来を語り、今後求められる役割や能力スキルなどを共有できているか
  • 昇進昇格していくことがキャリアだという固定観念を持っていないか
  • 自分と異なる価値観、多様なキャリア観を受け入れる心構えはできているか
  • やりたいことが今のチーム以外にあるメンバーの場合も、そのキャリアを尊重できているか
  • 無理矢理やりたいことを決めさせたり、都合が良い方向に誘導しようとしていないか

「キャリアの理解」の高め方

キャリアの理解は、Will Can Mustの重なりを広げるイメージで進めていくのが効果的です。
メンバーの中には、これらを意識して任された業務への意味づけ(自身への動機づけ)ができる方もいるかもしれませんが、ほとんどのメンバーは考えていないか、うまく重なり合っておらず、自身で意味づけすることができていません。
まずは、各メンバーがWill Can Mustをどう捉えているのか現状把握をしてみてください。
その上で、1on1などで定期的に対話を行い、それぞれの状態に合わせて必要な支援をしていきましょう。

メンバーのWill(やりたいこと)を把握する

まずは、メンバーと個別対話する時間を作り、メンバーのWill(やりたいこと)を確認しましょう。
ここで注意すべきは、これまでのメンバーとの対話内容や頻度です。
業務に関するやりとりが中心で、メンバーの価値観やキャリアなどメンバーを理解するための対話をおこなっていなかった場合、いきなり「キャリアをどう考えている?」と問いかけてもメンバーは戸惑います。
「急にどうした?」「何のための質問だろう?」「もしかして異動になる?」など、無駄な深読みを産んでしまい、どう回答すべきか困ってしまうでしょう。

以下のような手順を踏んで進めると、こうした誤解を与えず、メンバーが話してくれる可能性が高まります。

①メンバー理解を深めていく姿勢を伝える

「より良いチームにしていくために、もう少しみんなのことを理解する必要があると思っている。これまであまり時間が取れていなかったが、今後は定期的な1on1でキャリアの希望なども聞いてサポートしていこうと思う。」

いきなり質問するのではなく、上記のように背景や意図を事前に伝えましょう。
メンバーも事前に考えて準備してくれるため、唐突に聞くより効果的な対話になります。

②キャリアだけでなく、価値観や考え方から理解する

キャリアは、過去→現在→未来という連続性の中にあり、その時々の選択は価値観や考え方と密接に関係しています。
そのため、ある一時点のなりたい姿を聞くだけでは、メンバーの考えを理解しきれないことが多いです。

・過去→現在→未来の順番で質問をする(未来のことより、過去のことの方が話しやすい)
・やりたいことやなりたい姿がない場合は、価値観や考え方を把握する質問をする

無理に「ないたい姿」を作らせる必要はありません。また、マネジャーが思う方向に誘導するのも良くありません。
全員がなりたい姿を持っているわけではなく、やりがいが仕事以外(家庭や趣味)にあり、仕事は慣れたことを淡々とこなしたいというのが本音という方もいます。
こうした場合は、「まだなりたい姿を持てていない」「今はそういう考え」といった風に、率直に今の状態として受け止めましょう。

業務を通してCan(できること)が増えたり、チームの目指す世界観を伝えるなど将来のMust(すべきこと)が共有されるといったきっかけで、Willが見えてくることもあります。
業務を通じてできることが増えている段階は、Canの広がりによって選択肢が増え続けています。そのため、今のWillが3ヶ月〜半年後には変わっていることも少なくありません。
メンバーのCanやMustを広げる支援をしながら、定期的にコミュニケーションをとってみてください。

Must(すべきこと)の解像度を高める

チームの「役割や目標の明示」がうまくできていない場合は、会社やチーム、職種の将来がイメージできていない可能性があります。
メンバーがやりたいことを考える上では、今の会社やチームは今後どんな方向に進んでいくのか、どんな役割が求められるのか、どんな能力スキルが必要になるか、といった将来のMust(すべきこと)の理解が助けになります。
今後こんなことが求められるようになるなら、その時自分はこうなっていたい、こうありたいとイメージを膨らませることができます。

会社の方針、部の方針、チームの方針、今後任せていきたい業務の方針。
こうした未来に目を向けた発信が少ない場合、メンバーがやりたいことを考えるための材料を、うまく与えられていない可能性があります。
目の前の業務も大事ですが、四半期に1回など節目のタイミングを利用して、チームとしてどうしていきたいか中長期の話をマネジャーから発信するようにしてみてください。
メンバーが今の会社、今のチームの中で自身のやりたいことを見つけられる可能性が高まります。

Can(できること)を増やす支援をする

子供は「プロ野球選手になりたい」などできることに関わらずなりたい姿を語りますが、大人になるにつれ、自分ができること・できないことを理解し、それをベースに現実的に考えるようになります。
マネジャーが、メンバーの今の能力・スキルをベースにできる仕事だけを任せてしまっていると、メンバーは「能力・スキルの向上」を感じることができず、Canが広がりません。

「これはもう安心して任せられるから、次はこういった業務を経験してもらいたい。その中でこんなスキルを磨いていこう」
「今後こうしたニーズが増えそうで、こんな能力が求められるようになるはず。中長期を見据えて、今から経験していこう」
「基本的な業務はできているから、より高い成果を出す、効率を上げるなど、仕事の質を高める工夫を取り入れてみて」

上記のように、できるようになったことを認める、今後の方向性や目標を擦り合わせる、Canを広げていくことを求めるコミュニケーションが効果的です。

できることが増えず成長の停滞感を感じてしまうと、今できることが自分の限界値のように感じたり、新しいことへのチャレンジが億劫に感じられたりと、新しく任せたい仕事に対する動機づけが難しくなります。
目標設定の面談や、定期的な1on1を利用して、Canを増やす支援をおこなっていきましょう。

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