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明日から使える目標設定のポイント|計画実行度を高め、振り返りの精度を高める「SMART」

マネジャーになると、メンバー個人の目標設定に対してアドバイスやフィードバックを行う必要があります。
ところが、マネジャー自身が適切な目標設定スキルを持っていないケースが意外と多いのです。すると、メンバーにきちんとした目標の立て方のアドバイスができず、メンバーの目標設定が適切でない曖昧なものになります。
結果として、目標に対するすれ違いが生じ、メンバーの評価への納得度も低くなります。
今回は、具体的な事例も交えながら、明日からすぐに使える目標設定のポイントをご紹介します。

目次

曖昧な目標設定がもたらす悪影響

目標設定は、最終的な目的を達成するために、当該期間で到達を目指すゴールや方針、行動などを具体的に設定することです。
目標はチームや個人が目指す方向性や距離を明確にし、行動の指針になる、評価の判断軸になる、といった意義があります。

自身やメンバーの目標設定はマネジメントにおいて必須のスキルであり、きちんと目標設定が行えていない場合は、いくつかの悪影響をもたらします。

すぐに実行に移せない

例えば、サーベイで信頼関係が低いという結果になったことを受け、「メンバーとの信頼関係を築く」という目標設定をした場合はどうでしょうか。
これは目標ではなく、単に課題を言い換えただけです。「信頼関係ってどうすれば築ける?」「信頼関係を築くために、具体的に何をする?」と問いを投げかけてみてください。深く考えられておらず、答えに窮することがほとんどと思います。

設定した目標が、抽象的で曖昧だったり、現実とかけ離れた希望や願望になっている場合、目標設定はしたものの行動に移せない状態になってしまいます。どんな行動をするのか明確になっていない目標設定は、その時点で達成できる可能性が極めて低いです。
何が原因と考え、解決するためにどんなアクションが必要なのか、具体的に内省した上で行動計画まで設定するようにしましょう。

きちんと振り返りができない(改善PDCAを回せない)

『定義できないものは、管理できない。管理できないものは、測定できない。測定できないものは、改善できない。』
これは、改善の祖と呼ばれPDCAサイクルを提唱したウィリアム・エドワーズ・デミングの言葉です。
計測することで可視化され、マネジメントが可能になる。具体的に数値として見えるから、改善の目標を設定できる、という訳です。
シックス・シグマという手法で業務プロセスの改善を行なうことで有名な米GE(ゼネラル・エレクトリック)では、「測定できないものは、改善できない」という考えが、製造部門からホワイトカラーまで徹底されています。

設定した目標が、具体的ではない場合や、定量的に測れない場合は、きちんとした振り返りができません。
なぜなら、具体的でなければ何をすべきなのか分からないため、行動が曖昧、または行動ができないからです。そんな状態では、行動を積み重ねて目標達成に近づくことは難しいでしょう。
また、曖昧な目標では、そもそも達成したのかどうかの判断を客観的に行なうことはできません。曖昧であるがゆえに、人によって捉え方が変わってしまいます。

改善の始まりは、目標と現状のギャップ(=課題)を把握することです。
計測できなければ、目標とのギャップが分からないため、課題把握ができません。課題が分からなければ改善PDCAを回すことができません。また、目標に近づいているのか進捗状況も分かりません。
目標は、誰が読んでもわかるよう明確に表記し、定量的に測定可能な基準を設けるようにしましょう。

評価への不満につながる

目標設定と評価は表裏一体です。
「マネジャーと合意した目標設定を達成すれば、良い評価がもらえるはず」というのがメンバーの心理でしょう。
評価制度や実運用における評価軸は、企業/組織ごとに異なるため、マネジャーが評価軸をきちんと理解し、メンバーが目標達成した際にちゃんと評価できる目標になっているかという視点で、目標設定と評価を連動させることが重要です。 目標設定が形骸化している場合や、評価軸とうまく連動していない場合は、まず目標設定を見直してみてください。

目標設定のフレームワーク「SMART」

「SMART」という良い目標にするための5つのポイントがあります。
目標設定を行なう際は、この5つの視点を満たす目標になっているかチェックをしてみてください。

① Specific(具体的か)

誰が読んでもわかる、明確で具体的な表現で書き表すことです。
「具体的に何やる?」「目的やゴールにどう繋がる?」と、自身に問いかけてみると目標を具体的に設定できるようになります。

悪い例

メンバーとの信頼関係を築く。
※信頼関係を築くために何をするか具体的になっていません

良い例

隔週で1on1を行い、コミュニケーション量を確保。1on1で、メンバーの価値観や希望するキャリアを理解する
メンバーの価値観に合わせたコミュニケーションをとることで、信頼関係構築につなげる。

② Measurable(測定可能か)

目標の達成度合いが本人にも上司にも同じように判断できるよう、その内容を定量化して表すことです。
「どうなれば目標達成?」「できた/できなかったはどう判断する?」と、問いかけてみると、測定可能な目標か判断できます。

悪い例

メンバーを褒めることを意識する。
※意識するだけでは、測定できません

良い例

メンバー1人1人の仕事ぶりを把握し、全体への週報で各メンバーを月1回以上褒める
承認称賛を増やすために、結果を褒めることが難しい場合は、プロセス、行動、意識などを認める承認コミュニケーションを積極的に取る。
半年後の10月までに、サーベイの承認称賛結果のポイントを0.5ポイント改善する

③ Achievable(達成可能か)

希望や願望ではなく、達成可能で現実的な目標かどうかということです。
「かなり挑戦的な目標だけど達成できそう?」「自分でコントロールできる?」と、問いかけてみると良いです。

悪い例

業務過多なので中途採用で人員を増やす。
※権限がなく自分でコントロールできない目標です

良い例

業務過多の解消のため、上司へ増員要請
OKの場合も採用には時間がかかるため、無駄な業務、重要度の低い業務を洗い出し、やめることを検討

会社やチームの目標、自身の業務内容、改善したい事項に関連した目標にすることです。
「会社やチームの目標にはどう繋がる?」「どう改善に繋がる?」と、問いかけると確認できます。

悪い例

チーム飲み会を実施。
※何の目的なのか、ゴールとどう関係するのか分かりません

良い例

メンバー同士の業務における協力関係を促進する目的で、メンバーが互いの価値観や担当している仕事、目標を知る機会を設定する。
会話のテーマが大事なので、2回に分けて実施。自身も参加・発言して、目的に沿った話題になるようファシリテートする。
・1回目:価値観についてのワーク
・2回目:メンバーの目標設定について共有

⑤ Time-bound(時間制約があるか)

いつまでに目標を達成するか、その期限を設定することです。
「いつまでに実施?」「いつから実施?」と、問いかけると時間制約のある目標を設定できるようになります。

悪い例

生産性向上のためにできることをチームでディスカッションし、インパクトの大きいものを改善する。
※いつまでに実施するのか、期限がありません

良い例
  • 生産性向上のためにできることをチームでディスカッションし、不要な業務、改善できる業務の洗い出し。(期限:今月中)
  • インパクトの大きいものを1つ以上改善に取り掛かる。(期限:来月中)

いかがでしたでしょうか。
SMARTを意識した目標設定は、計画実行度を高め、振り返りの精度を高めます。
自身の目標設定や、メンバーの目標設定のレビュー時に、ぜひ意識してみてください。

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