チームメンバーが自分の仕事はするが他のメンバーについて関心がないと感じたり、従業員サーベイで同僚への信頼が低かったという経験はないでしょうか。
こうしたケースに直面すると、多くのマネジャーが、雑談を増やす、飲み会やバーベキューをするといった「コミュニケーションの量」を増やそうとします。
しかし、チームの発展段階によっては、「量のコミュニケーション」が意味をなさないケースも多々あるのです。
今回は、同僚への信頼を高め、チームのパフォーマンスを最大化する「チームビルディングの方法」について解説します。
チームビルディングとは?|意味と求められる背景
「チームビルディング」とは、日本語に訳すと「チームを構築する」という意味です。
組織論では、各チームメンバーのスキルや能力、経験を最大限引き出し、目標を達成できるチームを作り上げていく取り組みを指します。
ビジネスのスピード化や不確実性の増大、個人の労働観や価値観の多様化により、昨今はマネジメントやチームのあり方は大きく変化しています。
一人の優れたリーダーが、メンバーに指示・命令する一方向のコミュニケーションを基本に、チームの最大のパフォーマンスを引き出せることはほとんど無くなりました。
さまざまな施策や手法を用いて、意図的に優れたチームをつくるチームビルディングの重要度はますます高まっています。
チームビルディングの効果
コミュニケーションの活性化
チームビルディングにより、メンバー同士のコミュニケーションが増加します。
業務におけるコミュニケーションの増加によって、下記のような効果が見込めます。
・上司からの指示や伝達の理解度が高まる
・チーム内の報告・連絡・相談、ナレッジシェアの増加
・従来からあったチーム内の課題への取り組みが行われる
・インシデントの発生リスクが下がる
仕事に対するモチベーションの向上
メンバーはチームの共通目標へ取り組むことで、チームへの所属感や目的意識を持ちます。また、自身の役割が明確になり、組織への貢献意欲が生まれます。
チームビルディングの結果、チームの中で自分の働きが評価されたり、他者の仕事ぶりに刺激を受けることも増えます。
その結果、メンバーのモチベーションが高くなり、能動的にチームに貢献しようとするようになります。
新たなアイデアが生まれやすくなる
メンバー間の協働意識が生まれ、前向きな議論やアイデアの提案が行われやすくなります。
メンバーは対立した意見も受け止められるようになり、斬新なアイデアやイノベーションが生まれやすくなります。
生産性の向上
コミュニケーションや、提案、情報共有が活性化され、メンバー間の心理的な壁が取り払われることにより、無駄や非効率を改善しようとする動きが生まれ、生産性が向上します。
チームの発展段階|タックマンモデル
チームビルディング(組織進化)の有名な理論として、グループダイナミクスの研究をしていたアメリカの心理学者、ブルース・タックマンが提唱した「タックマンのグループ開発の段階(タックマンモデル)」というチームの発展段階があります。
チームの発足から、チームが成果をあげられる状態になるまでを5段階に分け、各段階をクリアしていくことで、チームが機能しはじめ、最高のパフォーマンスが発揮されるようになるというモデルです。
たとえば、チームの人間関係が良くないケースは、強いチームの手前である、準備期間(形成期、混乱期)の状態です。
チームの発展段階では、どんなチームにも「混乱期」がやってきます。

チームの準備期間|形成期と混乱期のチームビルディング
形成期
- 構成メンバーが決まった段階で、チームメンバーはお互いのことをよく知らない状態
- チームの共通の目標や、チームメンバー個人の役割も明確に定まっていない状態
- マネジャーに説明や指示を求めようとする
- メンバーに対して遠慮や不安、緊張感がある
最初は会話の「量」にこだわりましょう。チームのメンバー同士が気軽に話せる状況でないと、当然ながらチームは機能しません。
朝礼や夕礼、メンバーをシャッフルした定期的なランチ会やレクリエーション等でお互いが会話をする時間を持つだけでOKです。難しい取り組みは必要ありません。
- コミュニケーションの「量」が重要
- お互いを知る機会が必要
- リーダーはメンバーに対し、プロジェクト趣旨の説明、明確な指示が必要
混乱期
- チームとしての目的や個人の責任や役割が定着していない・理解しきれていないため、意見の食い違い、具体的な業務の進め方について対立が生まれる状態
- 個人が、それぞれのやり方で動く
- 自分の仕事はするがお互いに関して無関心
- 個人が主張することで、対立・衝突が生まれる
- メンバーのエネルギーはチーム内部の競争に向けられる
- チーム全体のモチベーションが下がりがち
- チーム内にゆるやかな派閥が発生する
チームの発展段階では、どんなチームにも「混乱期」がやってきます。チームとして前進していても痛みが伴う辛い時期です。このタイミングでは会話の「質」を意識する必要があります。質とは、お互いの考え方や価値観を知る時間ということです。
- コミュニケーションの「質」が重要
お互いの価値観や考え方のズレが対立を生み出すため、ランチや飲み会では解決されない。 - お互いを理解するための対話が必要
何をやりたいかといった価値観、得意不得意、何に喜びを感じるか等の人間性や仕事観を掘り下げる深い会話が必要。
ストレングスファインダーのような診断ツールを使った相互理解の場の設定もおすすめ。 - あえてメンバーの意見を表面化させる
トップダウンでなく、メンバー全員で意見やその背景を明らかにし、皆が納得するためにどうしたらよいか話し合う。
時に対立も生まれるため、リーダーのファシリテーションスキルが重要となる。
強いチームへの飛躍の期間|統一期と機能期のチームビルディング
統一期
- チームの目指すべき目的や、各メンバーの役割や特徴が共有され、統一感が生まれはじめている状態
- 目的やビジョン、役割等が明確になってくる
- メンバーは、チームのために行動を修正する
- 「私は」ではなく「私たち」が主語になる
- チームが活性化し、モチベーションが高まる
マネジャーは明確な目的や目標を指し示し、メンバーに役割を与えることが必要となります。また、メンバー同士が協力できるような仕組みづくりや、各々の存在感を発揮するために、与えた役割に対する成果を承認、称賛する等、チームの一人ひとりを主役にする活動が求められます。
- マネジャーはチームの目的、ビジョンを明確に示す必要がある
(参考)マネジャーは民主的であるべきか?|ボトムアップ、トップダウンの使い方 - マネジャーがメンバーに明確な役割を与える
- チームで合意したルール、役割、目標の達成にこだわる
- お互いの仕事の内容を共有する等、メンバー間のシナジーが生まれる活動を推進する
機能期
- チームに結束力や連動性が生まれ、個人の主体性が高いながら対立することはなく相互にサポートができるようになる状態。チームとして最もパフォーマンスを発揮できる理想的な状態。
- チームが一致団結して機能する。共通のゴールに向かえている。
- 主体性高く、自ら意思決定し、率先して行動する
- チーム全体のパフォーマンスとモチベーションが高い
- チーム内でお互いに強い信頼関係がある
チームビルディングには、チームが属する段階に適した対応が必要
混乱期を乗り越えられず、何年も同じ状況で停滞してしまうチームも数多くあります。
特にマネジャーは意図して行動していないけれど、より発展段階が進むケースもあるでしょう。
どちらのケースにおいても、自分のチームはどの段階にあるのか、考えてみることはとても重要です。
チームビルディングは体系的に理解している方が少ない分野であり、新たな発見があるはずです。
多くのマネジャーが、チームに何らかの課題を感じて量のコミュニケーションを繰り返すものの、チームに変化が怒らないという辛い時期を経験しています。
リーダーとして今のチームにどういった働きかけが必要なのか、改めて考えてみてください。