日本企業の特徴として、上意下達のパワーマネジメントが良くないと言われてきましたが、最近は「部下に聞いてみます」「みんなで決めます」といった民主的な体制を好むマネジャーも増えているようです。
民主的という言葉を聞くとポジティブに感じる方が多いと思いますが、こと成果を出さねばならない会社組織・ビジネスにおいては弊害もあります。
部下の意見を聞くこと自体は大切なことですが、なんでもかんでもボトムアップではリーダーシップのないマネジャーと見られ、チームのパフォーマンスは低下してしまいます。
今回は、マネジャーが民主的でありすぎることの弊害と、ボトムアップ、トップダウンのマネジメントの使い分けについて解説します。
マネジャーは民主的なだけではいけない
「チームの皆で決めました」マネジャー自身がこうした発言をする際は、注意が必要です。
マネジャーは学級委員ではありませんので、チームの結果に対して責任を負っています。皆で決めようがチームの結果責任はマネジャーです。
そして、多様な意見を尊重することが仕事ではなく、多様な意見がある中でも、目指す目標にチームを向かわせるのがマネジャーの仕事です。
民主的すぎる場合、下記のような弊害が生まれることに留意する必要があります。
チームが中途半端な方向を向いてしまう
仕事の能力や、モチベーションが異なるメンバーで議論した場合、さまざまな意見が出てくるのは当然です。これを皆の議論の中で着地させようとすると、それなりの形には落ち着きます。
しかし、最も状況を理解し、先を読み、成果を上げる判断ができる能力があるのは、メンバーではなく、リーダーであるマネジャーです。
民主的に出た結果がリーダーの意思決定より優れているわけではないのです。リーダーがすべきことは、自分の意思決定に納得し、フォローしてもらえるように、メンバーと丁寧なコミュニケーションを取ることです。
コミュニケーションコストが増える(効率性が落ちる)
民主的に決めようとすると、議論が増えていくので、チーム内でのコミュニケーションコストが膨大になります。
これは、仕事のスピードを落とすことに繋がり、業務量や時間的拘束を増やします。
リーダーシップがない、頼りないと見られる
チームの目標や目的を定める能力はメンバーにないことは普通であり、マネジャーがこれをチームに任せた場合、無責任、頼りないと思われて当然です。任せて良いのは具体的な仕事であって、責任ではありません。
ボトムアップとトップダウンの使い分け|やるべきことはトップダウン、やり方はボトムアップ
では、ボトムアップが有効な場面はどういった場合でしょうか?
やるべきことはトップダウン(リーダーが決める)、やり方はボトムアップ(メンバーが考える)
チームが目指すこと、そのためにやるべきことをリーダーがトップダウンで決めるからこそ、メンバーのボトムアップを効果的に引き出すことができるのです。
本来トップダウンで決めることまでメンバーに決めさせては、チームの方向性は定まらず、パフォーマンスは上がりません。
方針、目標、目的、価値観、評価基準
具体的なやり方、進め方、目標の実現方法
リーダーが絶対に自分で決めるべきこと|JALの再生事例
2010年1月の経営破綻から見事復活した日本航空(JAL)。
そのJALの再生において、京セラ創業者の稲盛和夫氏がリードしたことは広く知られています。
企業再生のさまざまな改革を行なう中でまず取り掛かったのが「JALフィロソフィー」と呼ばれるJALの社員に求める行動指針、行動哲学の作成です。
今では、リーダーの行動、現場サービスに至るまで、JALのベースとなっています。
HPにも公開されているJALフィロソフィーには、特に目新しいものは見られません。
それでもトップが指針を明確に示したことで、社員はJALフィロソフィーに基づいて考え、行動するようになり、JALの収益性やサービスレベルは大幅に向上し、見事V字回復を果たしました。
「何をすべきなのか」「どうしてやらなければならないのか」「やりきった先に何があるのか」の決定を部下に任せてはいけません。絶対にリーダーが決める必要があります。
その結果、ボトムアップが有効に機能し、価値あるメンバーの意見や主体性をより引き出すことができるのです。
強いチームをつくるには、トップダウン、ボトムアップ両方のマネジメントが欠かせません。
いかがでしたでしょうか?
あなたはリーダーが決めなければならないことも民主的に決めてしまってはいないでしょうか?
強いチームを作るためには、トップダウン、ボトムアップどちらも必要です。
それぞれの強みを理解し、マネジメントに役立てていきましょう。