メンバーと双方向のコミュニケーションがなかなか生まれない。
1on1でいつも自分ばかり話している気がする。
こうした不安や悩みは、管理職であれば多かれ少なかれ持っていると思います。原因のひとつに、メンバーとの間違った「対話」があります。
「対話」はスキルであり、単にお互いに会話をする以上の意味が、「対話」にはあります。
ただ何となく1on1を重ねても上手くなることはめったにありません。
今回は、「対話」の正しい意味と、より良い対話をするための方法について解説します。
対話は議論ではない
対話は「議論」ではありません。
対話とは、上司の意見をメンバーに納得させることではありません。
対話とは、メンバーからの要望をヒアリングすることでもありません。
議論では、話し合いを通じて、何らかの結論を決めます。
ヒアリングでは、要望を聞き出します。
対話はそれらとは異なります。
対話は、お互いの「意見や認識のズレ」に気づき、「違い」を明らかにすることです。
相手の意見をいったん受け入れ、考えている背景を理解することを対話といいます。
お互いが歩み寄る行為といえます。
なぜ対話が重要なのか?
対話のない状態での議論では、異なる意見の際に部下のやる気を削いでしまいます。
上司と部下ではパワーバランスが異なります。いきなり真に議論することは難しいです。
対話を通して部下は受け入れられた感情を持てるからこそ、上司が異なる意見だったとしても聞く心持ちができます。
上司が受け入れる姿勢を示すことで、発言しても良いという安心感を持つことができます。
ヒアリングの姿勢だけでは、本来組織を一緒に変革してほしい部下を、要望を出しそれが改善されることを期待する傍観者にしてしまいます。
対話によって、部下にも考えを問うからこそ、部下を主体的なチームの一員にすることができるのです。
上司と部下では持っている情報量もスキルも異なるので、結論が違うことはままあります。
最終的には議論や説得をしても構いません。
上司が判断すべき場面、正しい場面の方が多いでしょう。
しかし、メンバーに納得してもらう、意思決定に賛同してもらうためには、まず上司は部下を受け入れ、違いやその背景を理解することが必要です。
対話は自分とは違う正しさがあることを認めること
誰でも自分に対する反対意見や、意に反することを受け止めるのは難しいものです。相手の言うことが「違う」と感じたら、対立してしまいます。
自分の正しさを論理的に説明しようとするのは、普通の反応です。
「それは違うよ」と、すぐ説得、または指摘をしてしまう上司がこれにあたります。
しかし、それは対話ではありません。
自分の正しさをいったん脇に置き、相手が考える理由や背景について受け入れる。
自分とは違う正しさがあることを、認めることが対話です。
部下は上司とは違う人生を生き、違う人格を持っています。
部下にも部下なりに、そう考える理由があります。
上司と同じように、考えた理由や背景を持っています。
部下は上司より経験が足りないケースが多いので、上司が正しいことの方が多いかもしれません。
それでも、まずは部下の考える理由を受け止め、理解しようと努めましょう。
その結果、上司としての意見は変わらなくてもいいですし、変えても構いません。
部下の考えている背景を理解し、上司の考えの背景も理解してもらう。こうしたプロセスを経ても意見が異なる場合はあります。
その際は、上司としての判断、考えををきちんと伝えましょう。
上司と部下では情報量や見ている景色が違います。
最後は上司が判断すべきです。
それでも、まずは部下の考えを受け止める。
この対話のプロセスが、部下との信頼関係を築きます。
部下を傍観者にしてしまうヒアリングに注意
対話の際の注意点としては、部下に確認するという単なるヒアリングにならないようにすることです。
上司が「何が悪い?どうしたらいいと思う?」と聞いてばかりだと、部下の態度が傍観者になってしまいます。
上司としては、一緒に組織を良くするために、部下にも主体的に役割を発揮して欲しいはずです。
ところがヒアリングだけだと、部下は要望の実現に期待するようになります。その結果、当事者意識がなくなってしまいます。
マネジャーが組織を良くしようと、メンバーへのヒアリングを続けた結果、逆にチーム状態を苦しいものにしてしまうケースは少なくありません。
部下に主体性を持たせる対話を行うには、次の3点を意識してコミュニケーションを取りましょう。
- 部下も共に改善を図るメンバーだと思ってもらう
- 要望だけ聞いてしまうことを避ける
- 自分だけで意思決定せず、部下も含めて一緒に考える
上司は部下に対し、「あなたはどう貢献できるか?」「どのような形なら協力してもらえるか?」というチームへの貢献を求める姿勢を忘れないようにしましょう。
上司がトップダウンで判断しなければならない課題や、部下がタッチできない問題、アクションが不要なもの(状況確認等)についてはヒアリングは有効です。
場面によって使い分けましょう。
部下とのコミュニケーションなしにマネジメントは機能しない
いかがでしたでしょうか?
部下とのコミュニケーションなしに、マネジメントは機能しません。
「対話」は、マネジメントする上で必須のコミュニケーションスキルです。
自身の対話力が上がると、チームの変化や、マネジメントの効率化を実感すると思います。
いきなり上手くできる人はほとんどいません。実際にメンバーとの対話を通じて、試行錯誤して上達していくものです。
今回ご紹介したポイントを意識して、ぜひ部下との「対話」に取り組んでみてください。