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学ばない管理職が生まれる原因とその対処法|ダニングクルーガー効果とは

ダニングクルーガー効果とは「できない人ほど自分を過大評価する」という認知バイアスです。

今回は、ダニングクルーガー効果をベースに、なぜ学ばない管理職が生まれるのか?その仕組みと解決方法について解説します。

目次

ダニングクルーガー効果とは|能力の低い人ほど自分を過大評価する

ダニングクルーガー効果

認知バイアスの一種で、能力の低い人が実際よりも自分を高く評価してしまう現象を指します。
端的にいうと「できないのに、できると思う」ことです。

ダニングクルーガー効果は、米コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーという2人の心理学者によって1999年に提唱されました。

彼らが大学で行った実験では、読解や診療、自動車の運転、チェスやテニスの試合など様々な場面で、成績の悪い学生ほど自分の順位を過大評価し、優秀な学生ほど自己評価を正しく、もしくはわずかに低く見積もりました。

ダニングとクルーガーは、能力の低い人は次のような特徴があると述べています。

  1. 自身の能力が不足していることを認識できない
  2. 自身の能力の不十分さの程度を認識できない
  3. 他者の能力を正確に推定できない

上記特徴から、能力の低い人ほど、自分を過大評価してしまい、実力を伴わない自信を持つとされます。

この認知バイアスは、「年功序列」「上意下達」「解雇されない」「一度昇進すると降格されない」「転職があまり起こらない」といった特徴を持つ日本企業において、ベテラン管理職や年配社員によく見られる傾向です。
このような環境下では、他者からの指摘に向き合う必要性や、客観的な自身の市場価値(実力)を認識する機会がありません。

すると、実際はマネジメントとして能力が不足しているにも関わらず、肩書で部下は従ってくれるため自分はマネジメントできると勘違いし、自らを振り返ることをせず学ばない管理職が大量に発生します。

ダニングクルーガー効果による負のスパイラル

自分自身を客観的に認知する能力を「メタ認知(英:Metacognition)」といいます。
メタとは「高次の」という意味で「自分が物事を認知している状態を、客観的に認知している状態」を意味します。

メタの起源は、古代ギリシャの哲学者・ソクラテスが提唱した「無知の知(自分に知恵があると思い込んでいる人よりも、自分が知らないことを自覚している人のほうに知恵がある)」という歴史の教科書にも出てくる有名な概念です。
この「自分は知らないことを認知している」という考えが、メタ認知につながっています。

ダニングクルーガー効果に陥ると、能力がない人ほど正しく自分の能力や立ち位置、得意不得意を客観的に認識することができず、主観的に自己評価を高くすることになります。
そして、自信過剰を引き起こし、学ぶ姿勢が失われます。

自分を振り返ったり、自ら学んだりすることがなくなり、周囲からのアドバイスにも耳をかさなくなリます。
その結果、成長する努力を怠ることになり、能力不足に一層拍車がかかることになるのです。

ダニングクーガー効果に対抗する方法として「外部からの気づき」があれば、自身の能力不足を認知できるようになるとされています。

ところが、日本企業ではめったなことでは降格がなく、転職市場での客観的な評価を受けたことがある人も少ないため、ダニングクルーガー効果に抗う方法である「自身の能力の欠如を突きつけられる(認識する)機会」が少なく、ダニングクーガー現象が構造的に発生しやすくなっています。

こうして、学ばない管理職が大量に生まれることになるのです。

ダニングクルーガー効果を防ぐ方法

管理職向け

フィードバックを受けられる環境をつくる

常に学ぶ姿勢を持ち、周りからの否定的なフィードバックも、一度受け入れるようにしましょう。
誰でも耳の痛い指摘は聞きたくないものですが、自分を知り、自分を成長させるために向き合うことが必要です。

どんな人でも自分自身を正しく評価するのは難しいものです。
だからこそ、普段から上司部下関わらず、他者が自らに対して意見を言いやすい関係性を築くことに努力してください。

管理職にとっては、他者に意見されない関係性を築く方がはるかに簡単です。
何も努力しなかったら、そうした関係性にいつの間にかなります。
他者から意見を言われないことは優れたことではありません。勘違いしないようにしましょう。

従業員サーベイや、360度評価のような数字化された客観的なモノサシを利用するのも有効です。
自分の立ち位置を正しく把握し、改善するための助けになります。

自分の中に原因を求める習慣をつける

何かがうまくいかない場合、まず自分に原因はないかと考えてみることです。
能力の低い人は、自分の能力不足やレベルを正しく認識できないため、外部要因に目を向ける(他責思考)傾向があります。

しかし、それでは成長は望めず、能力不足は解消しません。
部下からの不満、失敗やトラブル等に直面した際は、自分に何か原因はないか、まず考える意識を持ちましょう。

人事向け

能力不足に気づける機会をつくる

ダニングクルーガー効果を回避する方法として、外部からの気づき(学び)があります。

評価のフィードバックをしっかり行う、社内で他の組織と仕事に関しての意見交換ができる場をつくる、優秀なマネジャーとその他を混ぜたグループワークを設定する等、強制的に管理職が自分以外からの意見を受ける機会が必要です。

また、研修やビジネスコーチ、従業員サーベイ、360度評価といった、日々の業務とは別にフィードバックされる機会によっても、普段は気づけなかった「自身のできなさ」に気づくきっかけを作ることができます。

学ばない管理職を生まないためには、強制的に第三者の客観的な指摘を受けることができる機会を設計してみてください。

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