マネジメントは、研修や本で学ぶだけではダメで、実際に経験することで身になると考えられています。
多種多様な「人」を相手にするため、何かを学んでも実践の中でカスタマイズしながらでないと使いこなせないのは感じるところでしょう。
では、実際にベテラン管理職と新任管理職の間にはマネジメント力の差があるのでしょうか?
今回は、マネトレを利用している管理職のうち261名を対象に、ベテラン管理職と新任管理職に分けて一風変わった調査を行いました。
ベテラン管理職と新任管理職のマネジメント力に差はあるのか?
マネジメント育成クラウド「マネトレ」では、マネジャーは四半期毎にコーチのサポートを受けながら、マネジメントや組織の改善計画を策定します。
下記は、その計画を実行したと回答した、マネジメント経験のあるベテラン管理職と、初めてマネジメントを行う新任管理職とで比較したデータです。
■マネジメント・組織の改善計画を作成したベテラン管理職組織のエンゲージメントスコアの変化
■マネジメント・組織の改善計画を作成した新任管理職組織のエンゲージメントスコアの変化
マネジメント経験のあるベテラン管理職は、改善計画の策定・実行による組織改善効果が高く、7割もの組織でエンゲージメントスコアが向上しました。
一方で、初めてマネジメントを行う新任管理職では、約5割の組織のエンゲージメントスコアの向上に留まりました。
これは、ベテラン管理職に比べて、23%組織改善の効果が低いことになります。
マネジメントは「経験」によって能力が高まるのは確かなようです。
これらのことから、マネジメントは「経験」によって能力が高まると言えそうです。
新任管理職がベテラン管理職より悪い結果であった原因は、下記のようなことが想定されます。
・マネジメント経験がないので、課題把握が適切に行えていない。
・マネジメントの引き出しが少なく、改善のたまの計画立案能力が低い。
・計画を柔軟に変更することが難しく、現場での計画実行力が低かった。
反対に、ベテラン管理職は経験があるからこそ、原因把握の精度が高かったり、実際に起こるさまざまな変化に対応することができ、計画を実行する能力が高かったと推察されます。
マネジメント経験の有無は、組織の悪化を防ぐ方向で力を発揮する
エンゲージメントスコアの悪化度合いを比べると、ベテラン管理職は20%の組織が悪化したのに対し、新任管理職は30%の組織が悪化と1.5倍悪くなっています。
ベテラン管理職と新任管理職の差は、組織の良化の方向では1.23倍、悪化の方向では1.5倍の差となり、組織の悪化を防ぐ方向でより顕著な差がみられました。
何らかの問題が起きればマネジャーは対処せざるを得ないため、組織の悪化を防ぐことは受動的な対応です。誰でも経験によってスキルが蓄積されやすいといえます。
一方で、より良い組織を作るという行動は、自らが取り組もうとしなければ発生しない能動的な活動です。
ただ経験を積むだけでは、組織を良くするというポジティブな方向へのマネジメント能力はあまり高まらないでしょう。
ネガティブな変化に対しては、ベテラン管理職は新任管理職の1.5倍も優れた結果を出したのに対し、ポジティブな変化に対しては新任管理職との差が1.2倍にとどまったのは、そうした背景があると考えられます。
企業は、管理職の「組織に対するポジティブなマネジメント能力」を向上させるための支援を考えていく必要がありそうです。