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健全な企業文化のつくり方|セールスフォースの事例に学ぶ

今、企業文化が世界的に再注目されています。
ミレニアル世代やZ世代に代表される若い従業員は、自らの仕事に「高い目的意識」を持たせたいと考えていると言われ、それには企業文化が大きな役割を果たすとされます。

今回は、CRM(顧客関係管理)プラットフォームの世界No1企業「セールスフォース」を例にあげ、健全な企業文化の作り方について解説します。

目次

企業文化と企業風土の違い

あなたの会社の「企業文化」はどんなものですか?
顧客第一、品質第一、経営理念や行動規範にあるそれらの言葉が思い浮かんだ方もいるかと思います。

一方で、新入社員研修や管理職研修以来、久しく意識したことがなく、ぱっと思い浮かばなかった方も多いのではないでしょうか。
企業文化を形作る理念や行動規範は、時間の経過と共に存在が薄くなってしまうことが普通です。

企業文化と似たものに、企業風土という言葉があります。

企業文化と企業風土

それぞれを整理すると、企業文化は、企業が打ち出した経営理念や行動規範などをベースに、意識的・無意識的に築き上げたもの。
企業風土は、そこで働く社員の人間関係をベースに自然に生まれるものです。

より具体的にいうと、企業文化とは、企業と社員との間で共有・形成される独自の価値観や文化、規範、ルールのことを指します。

創業時から積み重ねられた事実や、経営方針、マネジメント姿勢等によって企業文化は形作られており、社員が共通して持つ価値観や行動規範が企業文化となります。

セールスフォースの事例

CRM(顧客関係管理)プラットフォームの世界No1企業、、米セールスフォースの創業者マーク・ベニオフが書いた『TRAILBLAZER(トレイルブレイザー)』では、企業文化について最も多く紙面を割いて語られています。

著者は本書の中で、経営学の大家ピーター・ドラッカーを例に上げ、「ドラッカーは、企業文化は戦略に勝るというルールを定めたが、企業文化はすべてのことに勝る」と述べています。

セールスフォースという会社が、いかに企業文化を大切にしているかについて、本書の印象的な部分について一部抜粋します。

食通が喜ぶような食事を提供し、卓球台を設置すれば、企業文化ができたと思っている。

真実はというと、企業文化は単なる特典や無料サービスよりもはるかに重要なものだ。

それは基本的に、自分たちのコアバリューを定義して表現する方法と言える。

成長し、その状況を長く維持するには、人目を引くバリューをずらりと並べる必要はなく、ただ本物があればよい。

バリューを偽ることはできない。
企業文化が偽物や亜流、中途半端や検討違いなものであれば、その会社は最終的に傾いていくだろう。
将来に渡って繁栄を願う企業にとって、企業文化とそれを定義するバリューは、経済的成功の原動力となるのだ。

引用:『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』マーク・ベニオフ著

企業が大きくなるほど、また影響を及ぼす対象者が増えるほど、単純に製品で自社を定義づけることが一層難しくなる。

時と共に、従業員、顧客、さらには投資家、パートナー、コミュニティなどのステークホルダーが、あなたが事業を行なうに際してどんな哲学を持っているかを知りたかるだろう。

あなたに「志」があるかを問うてくるのだ。

引用:『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』マーク・ベニオフ著

同社では独自の企業文化をオハナ(家族)と呼び、コアバリューとして4つのシンプルな言葉を掲げています。
<コアバリュー> 信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等
参考:セールスフォースのコアバリュー

バリューの言葉自体には、他の会社と大きな違いはないでしょう。

しかし、他社とは圧倒的に異なるレベルでそのコアバリューを徹底したことで、同社ではオハナや社会貢献、ボランティア活動、1−1−1−モデルといった独自の企業文化が生まれました。

強力な企業文化をつくる方法

セールスフォースのコアバリューへの態度を示す事例としてこんな事例があります。

同社があるインディアナ州で、「宗教の自由の回復法」というLGBTQを差別することを認める法案が可決された際、マーク・ベニオフはTwitterで即座に「インディアナ州への投資を大幅に削減せざるを得ない」と反対を表明しました。

こうした問題に何かしらの態度を示せば、逆の立場の人から必ず反発が出ます。
マーク・ベニオフは政治家でもなんでもなく、いち企業の経営者です。
なぜあえて立場を表明したのでしょうか?

マーク・ベニオフは、「平等」というセールスフォースのコアバリューに反する差別であったことから、会社の代表として明確に反対の立場を示しました。
社内の従業員に対してはもちろんのこと、社会に対しても行動で示すために立場を表明したのです。

結果的に、この反対運動はムーブメントとなり、法案は修正されることとなります。

企業文化とは、社員や顧客に対するだけのものではなく、影響範囲はたとえわずかでも、ステークホルダー全ての人々を対象とします。
これは、アメリカ特有の話という訳ではありません。

平等を掲げているのに、管理職の女性比率が低い、役員は全員男性。
コンプライアンスを掲げているのに、パワハラや、過労死が発生している。
品質第一を掲げているのに、データの改ざんが行なわれている。
顧客第一を掲げているのに、受注や販売後の顧客の成功に関心がない。

日本企業においても、バリューに反する問題の例を上げれば枚挙にいとまがありません。
事業を強力に後押しする企業文化を創るためには、バリューに反する問題に目を背けず、バリューを徹底する必要があります。

コアバリューを設定する

人目を引くバリューをずらりと並べる必要はなく、シンプルで構わない。
ありたい姿から逆算して、企業として、そして人としての行動の指針を設定する。

設定したコアバリューを徹底する(企業文化を育成する)

リーダーはコアバリューを軸に判断をし、ステークホルダーに言動で示す。
バリューに反することがあれば、断固として反対する。

企業文化のメリット

企業文化には、様々なメリットがあり、代表的なものとして下記があります。

企業文化のメリット
  1. 社員にとって共通の指針になる:優先順位や取るべき対応を同じ物差しで判断することができる  
  2. 社員の一体感を生む:社員間の情報共有や相互協力の活性化、チームワークの改善につながる
  3. 社員のパフォーマンスが向上する:企業文化に沿って何ができるかを考え、自発的に行動する社員が増える

トップマネジメントであれば、自社の企業文化やコアバリューが何なのか、時代に合っているのかを考えます。
ミドルマネジメントであれば、自社の企業文化やコアバリューを理解し、それらに即した意思決定を行いましょう。
バリューに反することを許さない姿勢がどんな立場のマネジメントでも重要です。

そうした行動によって、健全な企業文化を育み・根付かせ、事業成長に繋げていくことができるはずです。

あなたの会社のコアバリューはなんですか?
ぜひ改めて考えてみてください。

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