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内定通知書と労働条件通知書の違い|内定を通知する際の注意点

最終面接が合格となれば、応募者に内定を通知し、入社意思を確認する段階に入ります。
対応の仕方を謝ると、思わぬトラブルになるリスクもある大事なフェーズです。

今回は、労働基準法をベースに、内定通知書と労働条件通知書の違いや、内定を出す際の注意点について解説します。

目次

内定とは?

一般的に、最終面接を合格し、労働条件通知書や内定通知書を発行したタイミングで「内定」と表現していることが多いですが、厳密には違います。

内定とは、応募者が企業から正式な内定通知を受け、両者間で採用・入社の意思を確認した段階で、「始期付解約権留保付労働契約」が成立する、との考え方が最高裁の判例上確立しています。

つまり、内定通知に対して、応募者が承諾した時点からが「内定」とされ、労働契約が成立します。
(始期付:入社日=雇用開始という条件付きの意。 解約権留保付:止むを得ない場合は内定を取り消すという条件付きの意。)

一方で、「内定」と伝えたり、内定通知書を送る行為は、企業側からは採用する意思表示をした状態で、応募者の入社判断に委ねられた状態となります。

最終面接直後の稟議や決裁がまだのタイミングで、「内定出します」などとコミュニケーションをとるのは危険なので避けましょう。
「最終面接合格です(これから社内稟議です)」などと伝えるのが適切です。

内定通知書と労働条件通知書の違い

最終面接が合格となった後、応募者に内定を通知する際に、どんな書面を準備していますか?

内定通知書、労働条件通知書など各社それぞれのフォーマットで準備していると思います。
労働条件の通知に関しては、労働基準法で、労働条件を明示することが義務付けられています。

内定通知書 : 内定を通知する書面          
労働条件通知書 : 労働基準法が定める労働条件の明示を行う書面

第十五条(労働条件の明示)
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

※厚生労働省令(厚生労働省ホームページ):
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/meiji/index.html
※労働条件通知書の様式(厚生労働省ホームページ):
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/

厚生労働省が用意しているフォーマットを使わなければならないわけではありませんが、そこに記載のある事項は表記が求められている内容です。
自社のフォーマットに記載していないものは、フォーマットに加えたり、厚生労働省のフォーマットで作成したものを別添することで、きちんと労働条件を明示するようにしましょう。

内定を出すタイミングでの注意点

① 内定通知書を送るまでは、「最終面接合格」と伝える

最終面接の面接官から評価が届いた後、社内で採用の稟議を行ったり、採用責任者の承認を得る必要があると思います。それまでは、社内で判断が覆る可能性もあるかもしれません。
不用意に「内定」という表現を使わず、「最終面接合格」と伝えるようにしましょう。

企業側から「内定」と伝えた場合、応募者の意思表示待ちという状態で、企業側から相応の理由なしに内定を取り消すことができなくなります。

解雇規制が厳しい日本においては、内定取り消しや解雇は難しく、企業にとっては非常に大きいリスクとなります。
言葉の定義を曖昧にせず、正しく伝えるようにしましょう。

② 内定通知書には「入社日」「内定取り消しの事由」を明記する

冒頭で説明したように、内定は「始期付解約権留保付労働契約」とされています。
応募者が内定応諾したタイミングから、労働契約が成立します。

「始期」は、入社日のことで、労働条件の効力発生タイミングとなります。
入社日を明記しない場合、入社日については柔軟に対応してもらえると解釈されても仕方ありません。
例えば、退職者の引継ぎの関係で「10月1日までに入社してもらわないと困る」といった採用部門の事情がある場合。
内定通知書に、「入社日:10月1日」と明記していなければ、本人の事情で後ろ倒ししてほしいという相談に対して、拒否することは難しいでしょう。こうしたトラブルを避けるためにも、入社日は明記しましょう。
その上で、早くなる場合、遅くなる場合の受け入れ可否について、別途メールなどで補足するとベストです。

「解約権留保」は、止むを得ない場合は内定を取り消すという条件のことです。
客観的に合理的で社会通念上相当として是認できる理由であれば、内定の取り消しできる場合がありますが、トラブルを未然に防ぐためには、きちんと明記しておくのが賢明です。

(例)
下記いずれかの事項に該当した場合、内定を取り消す場合があります
1. 入社予定日の前日までに前職を退職しておらず、当社に入社できなくなったとき
2. 病気や怪我等により当社での正常な就業が困難となったとき
3. 提出した履歴書その他書類で虚偽の記載が判明したとき
4. その他内々定を著しく不適当とする事情が判明したとき

③ 回答期限(=内定通知の有効期限)を明示する

内定通知書に記載でなくても大丈夫ですが、郵送なら送付状に、メールなら本文に回答期限を明記しましょう。
口頭だけのコミュニケーションは、証左が残らないので危険です。
一般的には、回答期限は1週間程度で設定している企業が多いです。

過去応募については、稀に「他社の選考が終わるまで待ちます」と曖昧な説明をしたり、「1ヶ月以内には」とかなり長い期間を設定している場合がありますが、やめた方が良いです。
他に優秀な方が見つかった場合などに、内定を出した方へ取り消しができなくなるからです。
回答期限は1週間程度と設定しておき、応募者が伸ばしてほしいと要望してきた場合は、理由を確認して改めて期限を設定すれば良いので、最初から長く設定するのは避けましょう。

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