業務支援は、マネジャーであれば誰もが実施していると思います。
しかし、その支援方法はまちまちで、ここにマネジメント力の差が出てきます。
同じ時間を使うなら、より効率的、効果的な支援にしたいはず。
今回は、マネジャーに求められる3つの支援を意識しつつ、業務支援のポイントについて解説します。
マネジャーに求められる3つの「支援」
支援とは、「力を貸して助けること」。
例えば、メンバーの仕事が遅いからと自身が代わりに対応することも、進め方1つまで細かく指示をすることも、任せきりにして失敗した際にお詫びに同行することも、捉え方によっては支援と言えるでしょう。
しかし、これらの支援の仕方では業務は進捗したとしても、メンバーの成長機会を奪ったり、自律性を損ないモチベーションを低下させたりと、マイナスの影響もあるため、効果的な支援とは言えません。
多くのマネジャーは「組織の目標達成」と「メンバー育成」の役割を担っています。
会社は毎年成長し続けることを求められるため、組織の目標も年々高まる傾向があり、継続的に成果を出し続けるには、メンバーの成長が欠かせません。
会社内での出世を希望せずワークライフバランスの取れた働き方を望む人など働き方の価値観も多様化しているため、メンバーの動機づけも重要度が増しています。
そのためマネジャーは、単に業務を支援するだけでなく、以下の3つの支援を意識的に行うことが必要になっています。
- 業務支援 : 適切な仕事を任せ、相談やアドバイスをすることで、業務を進捗させる
- 精神支援 : 職場環境や人間関係を良好に保ち、内発的動機づけでやる気を引き出す
- 内省支援 : 客観的意見や新たな視点を与え、振り返る機会を作ることで成長を促す
精神支援、内省支援は別の機会に詳しく解説しますが、メンバーのやる気や成長機会を奪うような支援が効果的でないのは理解いただけたと思います。
業務支援は仕事を任せるタイミングから始まる
メンバーのやる気や成長機会を奪う業務支援にならないようにするには、どのような意識が必要でしょうか?
業務支援は、何か問題が起きた時にサポートする、指導するというように発生ベースで対応を考えている方が多いですが、実は業務をアサインするタイミングでの仕事の任せ方も大きく影響します。
例えば、「いついつまでにこれをお願い」と納期だけ示してアサインした場合、メンバーは目的や背景を想像して仮説の中で進めなければなりません。
アサイン時に伝えれば迷わず進められることを時間をかけて考え、その上間違った解釈で進めてしまう可能性も出てしまいます。結果、数時間かけたのに最初からやり直しという悲劇もあり得ます。
このように、アサインタイミングでいかにきちんと仕事を任せるかによって、メンバーの仕事の進めやすさも業務支援にかかる時間も変わってきます。
仕事を任せるところから具体的な支援・フィードバックまでを全体的に捉え、予め業務支援のあり方を体系立てて理解しておくことが重要です。
仕事のアサインタイミングで意識すること
- 業務遂行の視点だけでなく、育成の視点、動機づけの視点を持つ
- 自分と全く同じ進め方を期待しない(メンバーの工夫を受け入れる)
- アサイン時、目的や制約条件をしっかりと説明する
- 理由や期待を添えて仕事を任せる
- 中間報告を求め、そこまではメンバーに任せる
意識すべきは、育成や動機づけの視点を持ち、自分と全く同じ進め方を期待しないことです。
業務遂行の視点だけで考えると、1から10までやり方を指示してタスクをこなしてもらう仕事の任せ方も効率的に見えます。
業務支援は少なく済むかもしれませんが、メンバーは自己決定感を感じることができず、ただ作業をこなすことになり、やりがいを感じることができなくなります。
アサイン時は、目的や制約条件をしっかりと説明することで、ゴールイメージをメンバーと共有しましょう。ゴールイメージさえ目線合わせができていれば、メンバーは遠回りしてでも着実にゴールに近づくことができます。
また、アサイン時に納期を伝えるだけでなく、中間報告を依頼しましょう。万が一の場合にもフォローできる時点に報告タイミングを設けておくことで、そこまではメンバーに任せることができるようになります。
さらに、メンバー側から報告や相談をするようになると主体性が生まれ、その場でフィードバックすることで成長機会にもなります。
詳しくは、別のコラムでまとめていますので、併せてご確認ください。
(参考)部下への仕事の任せ方|業績達成と育成を両立させる「アサインメント」の方法
業務支援で意識すること
- メンバーの成長のためにフィードバックする
- タイムリーにフィードバックする(経験が新しいうちに)
- 承認と指摘のバランスを意識する(指摘だけにならないように)
- 具体的な改善点やその理由をフィードバックする
- 相談しやすい状況を作る(物理的、感情的に)
マネジメントの場面では、どうしても誤った行動や非効率な進め方に目が向きます。それ自体は自然なことで、メンバーの仕事ぶりを把握できているのは良いことです。
重要なのは、どのように指摘すればメンバーの成長につながるか。
この意識を持っていると良い業務支援ができるようになります。
メンバーの気になる行動があった時は、放置せずにその場で一言声をかけましょう。
その人なりの理由があってその行動をとっているはずですが、数日後ではその時の感情やロジックを覚えていない可能性もあり、フィードバック効果が薄れます。
時間がない場合は、最悪メモやメッセージでも構いません。
タイムリーにフィードバックすることを意識してください。
業務支援の場面で多いのは、支援のつもりが指摘するだけになっているケースです。
メンバーが自分なりに考えて業務を進めている中で、マネジャーから指摘ばかりされたらどう感じるでしょうか?
人は誰しも承認欲求を持ち、認めてもらえず指摘ばかりされるのは、内容がいかに真っ当で正しくても、感情的にマイナスです。
承認のポイントは、結果承認だけでなく、プロセス承認、行動承認、意識承認、存在承認などもあるので、何かしら良い点として認めることができるはずです。
「積極的に行動しているのはとてもいいね。」と行動承認をした上で、「もう少し〜〜を意識してみて」とアドバイスしたり、「どんな意図(目的)でその行動を選んだの?」と指摘したいポイントの話を進めるなど、承認とセットで伝えるようにすると、メンバーの感情的にも素直に受け止めやすいフィードバックになります。
また、「それは違う」「成功するイメージがない」など否定だけで終えず、その理由や具体的な改善点までフィードバックするようにしましょう。
何が良くないのか原因がわからないものは、メンバーも改善のしようがありません。また、理由はあなたの判断軸そのものなので、判断軸をメンバーに伝えることで今後同じような場面での応用も効くようになります。
メンバーから相談しやすい状況を作るのも重要です。
生産性を考えても、悩んだり迷っている時間が最も非効率です。
仕事を任せる時に中間報告を求めることで、納期まで悩み続けるリスクは無くせますが、中間報告までの期間悩んで過ごすのも勿体ないです。メンバーから相談しやすい状況を作っておきましょう。
「相談しづらい」と感じるのは、物理的理由と感情的理由があります。
マネジャーが忙しく物理的に相談する時間がないという場合は、先輩メンバーにメンターの役割を任せ、若手が相談しやすい状況を作るのがおすすめです。
感情的理由は、評価への影響や叱責を受けるのを危惧して相談しづらいという信頼関係ができていないことが原因のものだけでなく、マネジャーが忙しそうで声をかけづらいなど配慮からくる相談しづらさもあります。
後者の場合、予め共有予定表などで「相談タイム」を設けてメンバーに分かるようにしておくと、メンバーはその時間に相談をくれるようになり、マネジャー自身もその他の時間は業務に集中しやすくなります。
ポイントが多く長くなりましたが、業務支援はメンバーの成長のために、仕事のアサインから支援までを全体として捉えて考えるとうまく行えるようになります。
アサイン時に目的や制約条件をしっかりと説明し、中間報告を求める。
悩む時間を極力減らすために、相談しやすい状況を作る。
指摘だけで終えず、何が良くないのかその理由や具体的な改善ポイントを伝える。これらのポイントを意識して、メンバーの成長につながる業務支援を心がけてみてください。