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部下を成長させる指導法とは?|明日から実行できる人材育成の手法

指導するにもパワハラと言われるのが怖い、時間がなくてコーチングなんてやってられない等、部下の育成方法に関する悩みは尽きません。

今回は、忙しい時にも使える「部下を成長させる指導法」や、人材育成における注意点について紹介します。
単純なコーチング、ティーチングといった内容ではなく、実践的な人材育成法ですのでぜひ参考にしてみてください。

目次

人材育成する上で、上司がやってはいけないこと

大前提、「叱る(非のある言動を咎め、厳しく注意する)」という行為を日常的に使ってはいけません。

叱るという行為は受け手にとって大きなストレスとなります。叱られた本人の頭は混乱してしまい、多くの場合、言われたことをきちんと受け止めることができなくなってしまいます。

そのため、現状を修正する、同じ過ちをしない、といった目的から離れてしまうので、「叱る」は日常的に使う意味がありません。
基本的には「指導(問いや助言を与え、良い方向に導く)」を用いましょう。

人材育成に効果的な「指導」の実践ポイント

指導とは、問いで考えさせ、部下を導く行為です。

部下に問いかけることで、本人の内省を促し、改善のために必要なことを部下本人に考えさせます。
単純な指摘や指示と異なり、本人の学びや成長に繋がりやすいとされます。

ポイント① 本人に考えさせる「問い」を投げかける

「問い」が先にあり、「自分はこうしてほしい」「それはだめだ」「僕はこう思う」といった自分の考えは後にあります。
自分の意見や考えを先出しせず、問いかけを通じて本人に考えさせましょう。

注意点として、「なんでできなかったのか?」といった否定形の問い方は相手を萎縮させるので良くありません。
「どうしたらもっと良くできたと思う?」といった未来形の問い方を行いましょう。

未来への問いかけの方が、部下の心理的な負荷は小さくなります。
失敗を詰めているような問い方にならないよう注意しましょう。

問いかけの例
  • どうしたらもっと良くできると思う?
  • どうすべきだったと思う?
  • なんでそう判断したの?

なぜ改善した方が良いのか」「どうすべきか」といったことは、部下本人が問いかけの中で気付けるならそれで良く、追認してやるだけで問題ありません。

指導では、必ずしも上司からこうした方が良いと伝える必要はありません。
また、仮に上司が考えていたことと同じでなかったとしても、前に進みそうなら部下本人の判断を承認することも重要です。

ポイント② 「問い」の時間をコントロールする

「問い」を使った指導が難しいのは、相手が答えられない可能性も多分にある点です。

「問い」は、「問い」の難しさや、部下のレベル、前提知識を持っているかどうか等によって、相手が何らかの答えを出せるかどうかが変わってきます。

本人のキャリアや価値観といったパーソナルな話を問う際は、本人が情報を全て持っているので、待っていれば何かしら出てきます。

しかし、業務に関することは、部下が持っている知識や経験、状況認識等が、複雑に絡み合っているため、出てこない時はいくら待っても出てきません。

何も出てこない場合は、より具体的な考えるヒントを与えたり、切り上げる時間をコントロールする必要があります。

研修でコーチングを学んだ管理職がやりがちな間違いが、指導での長過ぎる問いかけです。
長すぎる「間」は、受け手のストレスに変わってしまいます。

考える時間が長過ぎると、部下は考えている状態から、ストレスを感じている状態に変わってしまいます。
ストレスが大きくなると、部下の頭は混乱して考えることが難しくなり、内容も頭に入らなくなるため指導の効果は激減してしまいます。

問いの時間コントロールは非常に大切です。
部下自身で答えを出すのは難しそうだなと思ったら、ヒントを与えたり、「問い」を途中で切り上げてティーチングに移行しましょう。

ポイント③ 感情をコントロールする

管理職の中には、「指導」している最中、本来の目的を忘れてヒートアップしまう方が一定数います。

皆さんも、 管理職が指導している最中にヒートアップしてしまい、感情的になっている光景を見かけたことはないでしょうか?
感情的に叱り、いつしか怒りに変わっている人も少なくありません。

人材育成や部下への指導法の研修を受けてもなかなか実践できないのは、指導の最中に目的をいつの間にか忘れてしまい、イライラが先にきてしまうことが一因です。

部下にイライラをぶつければ、上司の気持ちは静まるかもしれません。
しかし、上司が怒れば、部下には多大なストレスがかかり、指導を受け取れません。

部下の学びにはならず、上司は部下に嫌われ、その現場を見た周囲からの信頼も失い、マイナスだらけでなんの意味もない行為になってしまいます。

現状を修正する」「同じ過ちをしないように導く」といった本来の目的を忘れずに、感情をコントロールすることを意識してください。

「問い」で導くに固執しない

問いで導く指導(コーチング的アプローチ)は、ティーチングより時間がかかります。

現実的には、忙しい業務の中で全てを「問いで導く指導」で行う余裕がない管理職がほとんどでしょう。
その場合は、「問いで導く指導」に固執しなくても構いません。

コーチング研修に感銘を受け、やたらとコーチングを多用する方がいらっしゃいます。
しかし、その結果時間がなくなり、業務フォローや、フィードバックがおろそかになる。適切な指示が受けられないとメンバーの不満に繋がる、といったケースが少なくありません。

だからといって、毎回「こうしろ、ああしろ」といった指示ばかりも適切ではありません。
上司が指示ばかりでは、部下は自分で考えることをしなくなり、成長しません。
いつまでも人材が育たず、管理職の忙しい状況も一向に改善されなくなってしまいます。

場面や業務状況を考えて、「問い」やアドバイス、指示を使い分けましょう。

時間がない時の指導法

上司としての考えを示した上で考えさせる

時間がない時に使える指導のショートバージョンは、「こうした方がもっと良かったと思うのだけど、それはなぜだと思う?」と、上司としての考えを指し示した上で、それはなぜかを考えさせるという「問い」の方法です。

前述の「どうしたら良かったか?」という具体的な改善策を考えさせる方法よりも、短い時間で振り返りを促すことができます。
この方法は、部下の能力がその問題に対して追いついておらず、自ら答えにたどり着くのが難しいと想定される場合や、問いを投げかけても何も出てこない時にも有効です。

さらに時間が無い場合は、「部下が考える時間」を一人で考えてもらうようにしましょう。

もちろん部下が考えている際に一緒に付き合えることがベストですが、具体的なヒントを与えるなどして、部下が答えに辿り着けそうな状態であるなら、一人で考えてもらうという形でも構いません。
その際は「考えがまとまったらいつでも声をかけて」と部下に伝えましょう。
もし部下からの声がけが無くても、必ず覚えておいて「例の件はどう?」と部下に聞くようにしましょう。

今ムリなら、後でも良い

すぐに対応が必要だが今は時間が取れない」といった状況の場合は、一旦ティーチングで指示し、後日部下との1on1などでそれを議題に取り上げ、振り返りを行いましょう。

時間をズラしての指導でも十分意味はあります。

部下が判断の理由、プロセスを考え、理解し、次回自分で判断できるように導いてみてください。
実際の現場では、新人や初めて担当する仕事のケースなど、状況によっては問いで導くより、ティーチングの方が適しているケースも往々にしてあります。

実際のマネジメントにおいては、教科書通りのスタンダードなコーチング、「問いで導く」方法に固執する必要はありません。

部下育成でよくある間違い

指導したら期待もセットで伝える

「指導したら、最後に期待を伝える」というような指導法もよく目にしますが、期待を毎回最後に伝える必要はありません。

現実のマネジメントで、毎回期待を伝えるのはそもそも無理があるでしょう。
むしろ、修正して成果が出た際に覚えていて、褒めたり認めてあげることの方が大切です。
この点は忘れず実行しましょう。

期待がないと動けないのはマイナスでもあります。
こうした方がもっと良いよね、楽だよね、その方が自分の成長やポジティブな結果に繋がるよね、と部下が思えていれば、上司の期待を毎回伝える必要はありません。

期待は嬉しい人もいれば、実はストレスを感じる人もいます。
期待や褒めるの乱用は、期待そのものの価値を下げてしまいます。
期待は外発的な動機づけであり、一時的な効果です。
部下の内から生まれる内発的動機づけに勝るものはありません。

「指導」の最後に、部下が前向きに修正に向き合える状態に導くには、部下の価値観やキャリアを理解していることがとても役立ちます。
部下の価値観に沿った伝え方ができれば、内発的動機づけに繋げることができます。

正確性を重視しすぎる

多少の違いであっても、なんでも部下の意見を否定し、自分の正解を伝える上司がいます。
確かに上司の方が正しい判断や方法なのかもしれません。

ただ、部下との多少の違いでさえ否定する上司であるのに、部下に考えろと問うのは無理があります。
部下にとっては、自分で考えることは全て徒労に終わることが明白だからです。

たとえ「問い」を使っていても、最終的に必ず上司の意見を通すなら、実質的にコミュニケーションの矢印は「上司 ➝ 部下」の一方通行です。
部下にとって自分で考えることは無駄であり、上司の指示を仰いだ方が合理的です。
結果的に、指示待ちの部下が量産されます。

指示の多用によるマイナスは、指示待ち人間を作るだけではありません。
毎回上司による修正が入るので、やり直しが頻発します。
すると、ビジネスのスピードは遅くなり、労働時間は長くなり、エンゲージメントも低下します。

緊急時など、指示が有効な場面もありますが、日常的には「指示」ではなく「指導」を用いましょう。

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