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影響力の発揮の仕方|部下や関係者の協力を得てチームを成功に導くマネジメント

影響力とは、他に働きかけ、考えや動きを変えさせるような力のことです。
マネジャーにとっての影響力は、メンバーや上司、その他関係者に働きかけ、望ましい行動を引き出す力です。
もし、業務プロセスの構築や業務支援をきちんとしているのに思ったように進まない、協力を得られていないと感じる状況なら、影響力を高めることが解決に役立つかもしれません。

今回は、マネジャーの影響力を高める方法(人を動かす秘訣)について解説します。

目次

人を動かす秘訣|みずから動きたくなる気持を起こさせる

マネジメントにおいて、業務フロー構築や業務支援も大事ですが、実際に業務を行うのは他者なので、いかに期待通りに動いてもらえるかも重要な要素です。
名著『人を動かす』(デール・カーネギー)では、「人を動かす秘訣は、みずから動きたくなる気持を起こさせること」と述べられています。この考え方が、影響力を高めるための参考となります。
さらに同書では、人を動かす原則として3点挙げられています。

人を動かす原則

  • 批判/非難するかわりに、相手を理解するよう努める
  • 重要感を持たせる(承認欲求を満たす)
  • 人の立場に身を置く(強い欲求を起させる)

批判/非難するかわりに、相手を理解するよう努める

「盗人にも三分の理」という諺がありますが、部下があなたと違う考えや行動をしている場合も、その人なりの理屈があります。
批判/非難してしまうと、反発や反感が生まれるため、行動を改めてほしい場面では逆効果です。
頭ごなしに否定するのではなく、なぜ自分と違う考えに至ったのかを理解することが重要です。

重要感を持たせる(承認欲求を満たす)

承認欲求は人の根源的な欲求であり、他者から「自分は重要な存在だ」と認められたいという欲求があります。
承認欲求を満足させる方法は人それぞれ異なりますが、満たす方法は称賛(褒める)だけではありません。
存在承認、意識承認、行動承認、プロセス承認、結果承認など、承認できるポイントを理解しておけば、相手にあった承認が使いこなせるはずです。
(参考)承認・称賛のマネジメント|部下のやる気を引き出す承認と称賛の使い方

人の立場に身を置く(強い欲求を起させる)

人の欲求は承認欲求だけではありません。
例えば、利益あることはやりたいと思い、不利益があるなら回避したいと思います。
火のないところに煙は立たないように、欲する理由がないところに欲求は生まれません。
相手の立場に身を置いて、相手の利益/不利益を考えてみましょう。

影響力の武器|人が要請を受け入れる心理的原理

社会心理学者ロバート・B・チャルディーニの『影響力の武器』では、説得の秘訣として、人が要請を受け入れる心理的原理についてまとめられており、6つの影響力の武器(返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性)について述べられています。
今回は、特にマネジメントに役立つ「返報性」と「コミットメントと一貫性」の2つをご紹介します。

返報性

他者から何らかの恩恵を受けたら、そのお返しをせずにはいられない。「借り」を作った状態は心地悪く感じるというものです。
GIVE&TAKEは一般用語で使われますが、心理学的にも実証されている人の心理です。
スーパーで試食を貰った時に「買わないと悪い」と思ってしまうのが、まさに返報性です。

上司や組織に対しては、部の方針に同調し促進役を買って出たり、会社や部の戦略に沿ったチーム運営で成果を追い求めるのが基本です。
メンバーと一緒になって会社や上司の考えに反発することで、メンバーからは好かれているマネジャーもいますが、これはただの仲良しクラブであり、影響力のないマネジャーになってしまいます。
影響力のあるマネジャーは、会社や部の方針をきちんとチーム運営に組み入れ、実行に移します。方針が自分の考えと異なる場合も、上司に確認したり実行してみた上で、問題点や改善点について意見します。
方針に沿って実行した上での意見であれば、上司も真剣に耳を傾けるはずです。
こうして意見が通るようになり、マネジャーとしての影響力がさらに高まっていくのです。

メンバーに対しては、業務の支援や指導は「当たり前」という感覚になっている可能性があり、効果が薄い場合があります。
その場合は、メンバーの不満を聞きそれを解消するのがおすすめです。
まずは、早期に解消できる不満に対応し変化を感じさせることです。
自身で解決が難しいことや解決に時間がかかりそうなものは、解決しようとする姿勢を見せ、時間がかかる旨を伝えましょう。
返報性はプラスだけでなくマイナスにも働きます。「不満を伝えたのに対応してくれない」と感じさせてしまうと、あなたの依頼に対しても「対応したくない」という感情が芽生えます。
マネジャーは評価者なので、大抵はそれでも対応してくれますが、これは役職のパワーを借りて従わせているだけであり、メンバーが心から動きたいと思っていない状態となってしまいます。

返報性を理解し、相手が快く行動してくれる状態を目指しましょう。

コミットメントと一貫性

一度決定を下すと、そのコミットメントと一貫した行動をとり、自身の決定を正当化しようとする心理が働きます。
発言と行動が一致しない人は、裏表がある人だと疑われてしまうため、自動的に一貫性を保つことが習慣化しているのです。

メンバーにコミットメントを求めたい場合に、上司の立場で指示・命令するような伝え方になっていませんか?
同じ業務でも、上司が命令するのではなく、メンバーが自分自身に決めさせることでコミットメントを引き出すことができます。
仕事の任せ方ひとつで、メンバーのやる気は変わります。目的や制約条件はきちんと伝えてブレないようにした上で、細かい部分はメンバー自身で決定させるようにすると効果的です。
(参考)部下への仕事の任せ方|業績達成と育成を両立させる「アサインメント」の方法

影響力を高めるためにマネジャーが意識すべきこと

影響力を高める方法として、心理学的原理を踏まえたポイントをご紹介しました。
マネジャーとして部下や組織を動かす際は、業務をしっかり設計するとともに、人の心理を理解し、自ら動きたいという気持ちにさせることが大事です。

  • 異なる考えや行動を頭ごなしに否定せず、相手の考えや相手なりの理屈を理解する
  • GIVE&TAKE(返報性)を意識し、まず自分が先に何かを提供する(貸しを作る)
  • 1から10まで指示命令ではなく、相手に決定させることでコミットメントを引き出す
  • 承認称賛を用いて、相手に重要感を持たせる(承認欲求を満たす)

無意識に実践していることもあるかもしれませんが、改めて意識してみてください。


いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した心理学的原理は、非常に強力なので、うまく活用すれば影響力を高めることができます。
一方で、強力がゆえに、注意も必要です。
ともすれば、間違った方向に人をコントロールすることもできてしまうからです。

ぜひ、自己の利益、自組織の利益など部分最適ではなく、全体最適を考えて影響力を発揮するように意識してみてください。

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